全体の要約、
- 【コストコ上海店の初日】:2019年8月、中国初のコストコが上海にオープンし、2万人以上が殺到。 周辺道路は大渋滞し、真夏の暑さ対策で開店時間が前倒しされましたが、電動シャッターが完全に開く前に利用者が強引に潜り込む事態が発生しました。
- 【商品争奪と転売行為】:開店後、利用者は目玉商品である茅台酒を求めて店内を走り、20分で完売しました。 転売目的で購入した客がSNSで利益を公開するなど、転売行為が横行しました。
- 【運営上の混乱と一時閉鎖】:店内では商品の奪い合いやレジでの長蛇の列が発生し、コストコはわずか数時間で一時閉鎖しました。 閉店後も客が店舗周辺に留まり、保安員と衝突する騒動に発展しました。
- 【非常識な顧客行動】:試食のつまみ食いや商品の放置、他人の買い物かごからの商品窃盗、さらには店内での排泄行為など、多くの非常識な行動が問題となりました。
- 【文化的・社会的な課題】:コストコは返品制度の悪用や会員の解約殺到に直面し、日本の成功モデルが中国市場では通用しないという文化的な違いに起因する課題が浮き彫りになりました。
- 【中国市場への戦略】:コストコは、実店舗オープン前にECプラットフォームで事業を展開し、市場の動向を把握する戦略をとりました。 また、安価な会員費を設定して会員数を増やしました。
- 【アパホテルの事例】:2017年、アパホテルが客室に置いた書籍が原因で中国政府から経済制裁を受けました。 しかし、アパホテルは謝罪を拒否し、信念を貫くことで国内顧客の支持を獲得し、売上と利益を大幅に伸ばすことに成功しました。
- 【新型コロナウイルス禍での貢献】:2020年、アパホテルは新型コロナウイルス感染者の療養施設として客室を提供し、社会貢献を果たしました。 これにより企業イメージが向上し、業界全体が赤字に苦しむ中で黒字を達成しました。
- 【ビジネスにおける教訓】:コストコとアパホテルの事例は、グローバル展開における文化の違いや、危機をチャンスに変える経営戦略の重要性を示しています。
現実は現実として直視せよ!|中国人のマナーの悪さは世界基準を大きく超えている
コストコ上海店のオープン初日に発生した大混乱と問題点が指摘される
2019年8月27日、中国初のコストコが上海市郊外にオープンしました。 開店前から多数の利用者が来店し、会員登録者数は10万人、店舗前には2万人以上が殺到しました。 駐車場は満車となり、周辺道路は3キロメートルにわたって大渋滞が発生しました。 真夏の暑さ対策として開店時間が30分前倒しされましたが、電動シャッターが完全に開く前から利用者が強引に潜り込む事態が発生しました。
オープン初日のコストコ上海店における商品争奪と転売目的の購入が判明する
開店後、利用者は目当ての商品を求めて店内を全速力で走り出しました。 開店セールの目玉であった茅台酒は通常価格の半額で販売され、わずか20分で完売しました。 その後、転売目的の購入者が多数存在したことが判明しました。 ある家族は6人で4時間並び、茅台酒を12本、五粮液を6本購入し、転売によって約20万円の利益を得たことをSNSで公開しました。
コストコ上海店における店内オペレーションの停止と一時閉鎖措置が講じられる
店内では商品の奪い合い、レジでの2時間以上の長蛇の列、ローストチキンを巡る小競り合いが相次いで発生しました。 これらの事態を受け、コストコ上海店はオープンからわずか数時間で一時閉店を余儀なくされました。 コストコの公式アプリを通じて利用者に閉店が告知されましたが、閉店後も多くの人々が店舗周辺に集まり、再開を待つ事態となりました。 これに対して激怒した人々が保安係員と小競り合いを起こし、暴動寸前の状況となりました。
コストコ上海店はオープン後の緊急対策会議を経て営業を再開する
オープン初日の大混乱を受け、コストコ上海店は緊急対策会議を開催しました。 会議では、商品の補充、セキュリティの強化、入場制限の導入などの対策が議論されました。 その後、状況は少し落ち着きを取り戻しましたが、依然として多くの利用者が来店し、人気商品はすぐに品切れとなる状態が続いています。 コストコは商品の在庫管理を徹底し、人気商品の販売制限を設けるなどの対策を講じています。 また、中国の消費者の嗜好に合わせた商品開発も進められており、茅台酒のような中国特有の商品を増やすことが検討されました。
コストコ上海店における利用者の信じられない非常識な行動が問題となる
コストコ上海店では、試食コーナーで提供された商品を大量に持ち去り満腹になるまで食べ続けたり、販売商品の寿司やマフィンのパックを勝手に開けてつまみ食いをした後、元の場所に戻すといった行為が多発しました。 また、買い物かごに入れた牛乳や冷凍肉類を別の場所〔常温の売り場や床など〕に放置し、商品が廃棄される事態も発生しました。 さらに、他の利用者の買い物かごから商品を勝手に取ろうとする行動も確認されました。 幼い子供が店内のゴミ箱で排泄する事例や、大人の男性がレジに並んでいる最中に店内で放尿する事例も発生しました。
コストコが直面する課題は文化的・社会的な差異に起因している
コストコの返品制度は、食品をほぼ食べ終えた状態で返品したり、自ら破損させた商品を持ち込むといった悪用が増加しています。 また、特売品を購入できなかった会員が解約を求めてカウンターに殺到する事態も発生しました。 コストコは日本市場で成功を収めており、日本の消費者はルールを守り、他の顧客やスタッフへの配慮が行き届いているという評価があります。 一方、中国市場では文化や国民性の違いにより、これまでのビジネスモデルが通用しないという課題に直面しています。 中国のコストコは、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響もあり、入場が完全予約制となるなど、運営形態が変化しています。 また、中国の消費者はQRコード決済を主流としており、システムのローカライズが必要となりました。
コストコは中国市場での事業展開において戦略的なアプローチを試みる
コストコは中国に実店舗をオープンする5年前の2014年に、アリババのECプラットフォームであるTモールグローバルでEC店舗を先行して展開しました。 この戦略により、中国の消費者の動向と需要を把握することが可能となりました。 上海の第1号店は郊外に位置し、外国人コミュニティや会員制に親しんでいる顧客をターゲットにしています。 中国のコストコの会員費は299元と、日本やアメリカと比較して最も安価に設定されています。 この安価な会員費が多くの会員を獲得することに繋がっています。
コストコ上海店の騒動はグローバル展開における困難さを示唆している
コストコの上海店における騒動は、文化の違いがビジネスにもたらす予想外の影響を如実に物語っています。 この出来事は、グローバル展開の難しさを世界に知らしめる象徴的な出来事となりました。 中国の消費者の熱狂的なエネルギーは、適切にコントロールできれば大きなビジネスチャンスになる可能性を秘めています。 しかし、マナーの問題は文化の違いだけでは片付けられない、人の根本的な問題として捉える必要があります。
アパホテルの経営戦略は危機的状況をチャンスへと転換させた
アパホテルは、特定の歴史認識を記した書籍を客室に置いたことで2017年に中国から強い批判を浴びました。 この事態により中国政府は経済制裁を発動し、世界中のメディアがアパホテルの経営危機を報じました。 しかし、アパホテルは謝罪を拒否し、書籍の継続配置を表明することで対決姿勢を貫きました。 この強硬な姿勢は、中国からの大規模な予約キャンセルと批判を招きましたが、同時に国内の顧客からは支持を獲得しました。 その結果、同社の経営は新たな局面を迎え、最終的には売上高と利益の大幅な向上につながりました。
日本国内の観光ブームと宿泊施設の深刻な被害
2017年当時、日本は年間3600万人を超える外国人観光客が訪れる空前の観光ブームに沸いていました。 政府は2020年までに4000万人を誘致する目標を掲げ、インバウンド消費は年間4兆円を超える巨大市場へと成長していました。 しかし、その華やかな状況の裏側で、宿泊業界は深刻な問題に直面していました。 首都圏のビジネスホテルでは、中国人グループが浴槽内で排泄行為を行い、排水口を閉塞させるという事例が発生しました。 この事態により、客室は2日間使用不可能となり、清掃費用と機械損失を合わせると30万円以上の損害がホテルに発生しました。 また、民泊施設でも同様の被害が相次ぎ、食べ残しや使用済みティッシュが床を覆い尽くすなどの惨状により、清掃費用が45万円にも達し、民泊事業の断念につながりました。 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の調査によると、2016年から2017年にかけて外国人観光客による迷惑行為の報告件数は前年比380%という驚異的な増加を記録し、特に中国人団体客による被害が全体の67%を占めていました。 このような問題は日本に限ったことではなく、韓国やタイ、マレーシアでも同様の事例が社会問題化していました。 多くの宿泊施設経営者は、収益確保と施設保護という相反する要求の中で、板挟みの状況に陥っていました。
アパホテルの書籍配置が国際問題へと発展した
2017年1月12日、ニューヨーク大学の学生カップルがアパホテル新宿御苑前に宿泊しました。 客室に置かれていた書籍『本当の日本の歴史理論近現代史学』を読んだ中国系アメリカ人男性は、その内容が自身の歴史認識と大きく異なることに憤慨し、書籍を手にビデオメッセージを撮影しました。 この動画は1月15日午後8時に中国最大のSNSに投稿され、わずか6時間で5万シェア、深夜には100万シェアを突破する爆発的な拡散を記録しました。 中国のネットユーザーからは、戦争犯罪への冒涜、アパホテルの利用拒否を求める声が溢れました。 この炎上は、主要ニュースサイトやテレビニュースでも報じられ、再生回数は7700万回に達する中国SNS市場でも稀な大炎上事件となりました。 北京大学の学生たちは抗議の集会を開催し、中国の有名芸能人たちもSNSで発言することで炎上はさらに加速しました。 事態を重く見た中国政府は公式対応に乗り出し、1月17日には外務省の報道官が[一部の日本勢力が歴史を曲解している]と厳しく言及しました。 さらに1月24日、中国国家観光局は国内の全旅行代理店および予約サイトに対し、アパホテルとの一切の協力停止を正式に要請しました。 これは事実上の国家レベルでの経済制裁であり、単一の外国企業に対する異例の措置でした。 中国の主要な旅行予約サイトはアパホテルの取り扱いを即日停止し、検索結果にも表示されなくなりました。 また、中国国内の旅行会社50社以上が取引完全停止を発表し、既存の団体旅行パッケージもすべてキャンセルとなりました。 中国メディアも一斉にアパホテル批判キャンペーンを展開し、人民日報は[日本右翼勢力の歴史歪曲を断固糾弾する]と一面トップで大々的に報道しました。 このように、一冊の書籍が前例のない国際問題へと発展しました。
アパホテル代表は謝罪を拒否し、信念を表明した
中国政府と7700万人の怒りを一心に受けたアパホテルに対し、世間は当然、謝罪会見と書籍の撤去を予想していました。 しかし、2017年1月17日午後3時に開催された緊急記者会見で、アパホテルの創業者である元谷外志雄代表は、誰もが予想していたことと正反対の態度を示しました。 元谷代表は[我々の出版物について謝罪するつもりは一切ございません]と表明し、会場の記者たちに衝撃が走りました。 彼は、書籍は特定の国家や民族を攻撃する目的ではなく、あくまでも客観的な事実に基づいた歴史認識の提示が目的であると説明しました。 さらに、[我が国日本には憲法によって保障された表現の自由があります。 外国政府や特定団体からの一方的な圧力によって我々の主張を撤回するようなことは絶対に許されません]と述べ、今後も継続して客室に書籍を配置することを宣言しました。 この強硬な姿勢は、中国側の挑発的な質問に対しても揺らぎませんでした。 中国人記者からの[経営に深刻な影響が出ているはずだ]という質問に対し、元谷代表は[中国人宿泊客の売上構成比は全体のわずか5%程度に過ぎない]と回答しました。 この発言は、中国人観光客が日本観光業の重要な柱だと信じていた中国側記者団にとって想定外の衝撃でした。 アパホテルは意図的に、どの国籍の顧客も全体の10%以下に抑えるリスク分散戦略を採用していたことが明らかになりました。 多くの企業が中国市場への依存度を高めていく中で、アパホテルは逆に依存しない経営を徹底していました。 そして、元谷代表は[我々の方針にご賛同いただけないお客様にはわざわざお越しいただく必要はございません]と述べました。 この発言は、後に[嫌なら来るな]という言葉として世界中で話題となり、企業の価値観と経営方針を巡る根本的な議論へと発展しました。
経営危機はホテルの品質と収益を向上させる機会となった
記者会見から1週間後、アパホテル各店舗では中国人観光客の姿が激減しました。 しかし、これは単なる客数減少ではなく、ホテル業界における質的な変革の始まりでした。 騒音に関する苦情電話は激減し、ロビーの混雑も解消されました。 朝食会場では大皿を独占する光景がなくなり、スタッフは丁寧なサービスを提供できるようになりました。 深夜の騒ぎや備品の盗難も大幅に減少し、テレビのリモコンやドライヤーなどの紛失・盗難は月に50件以上あったものが2〜3件程度まで減少しました。 これにより、備品補充費用は前年同期比で58%削減されました。 設備管理部門でも、故意による設備破損がほぼゼロとなり、メンテナンス費用が前年比23%削減されました。 最も重要だったのは、従業員の労働環境が改善されたことです。 ストレスレベルの軽減によりスタッフの離職率は年20%から年8%へ、欠勤率は月15%から月5%へと改善しました。 この変化は日本人宿泊客にも敏感に感じ取られ、[静かで落ち着いた環境][日本らしいおもてなし]といった絶賛のコメントがSNSや口コミサイトに殺到しました。 顧客満足度調査では、総合満足度、清潔度、静粛性、リピート利用意向が軒並み向上しました。 特に静粛性は、従来の最大の弱点から最強の差別化要素へと転換されました。 中国人観光客が減少した一方で、国内ビジネス客、欧米系個人旅行客、国内女性客の利用率が急激に増加しました。 結果として、アパホテルの収益構造は根本的に改善されました。 売上高は2017年の115億円から2018年には138億円へと20%増加し、営業利益率は15.2%から22.8%へと7.6ポイント改善しました。 客室稼働率も82%から85%へと向上しました。 中国人客が減少したにもかかわらず、売上は大幅に増加しました。
新型コロナウイルス禍におけるアパホテルの社会的貢献
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大により観光業界は壊滅的な打撃を受けました。 多くのホテルや旅館が廃業に追い込まれる中、アパホテルは社会貢献の精神で全国の注目を集めました。 2020年4月10日、厚生労働省から軽症・無症状の新型コロナウイルス感染者の療養施設としてホテル客室の提供を求める緊急要請が発せられました。 多くのホテル事業者が風評被害を懸念して協力を躊躇する中で、アパホテルは業界で最も早く協力を正式に表明しました。 この決断は、約2万5000件の既存予約をキャンセルする必要があったため、容易なものではありませんでした。 深夜まで電話対応を続け、顧客一人ひとりに丁寧に事情を説明し、代替案を提示しました。 また、近隣住民の不安を解消するために、社長自らが各地を回って説明会を開催し、医療専門家を招くなどの誠実な対応を続けました。 住民の理解を得たアパホテルは、4月20日から療養施設としての運用を開始しました。 全国36都道府県で66施設、1万室を提供し、総受け入れ人数はのべ8万5000人に達しました。 この大規模な社会貢献活動により、アパホテルの企業イメージは劇的に向上しました。 菅義偉官房長官は記者会見で感謝を表明し、アパホテルは社会責任を重視する模範企業として広く認知されるようになりました。 観光業界全体が赤字に沈む中、アパホテルは2020年度に売上高165億円、営業利益12億円を達成し、黒字を確保しました。 これは業界平均が売上減・赤字決算という状況下での奇跡的な成果でした。
アパホテルの戦略は企業経営の貴重な指針となった
アパホテルの中国に対する毅然とした対応は、賛否両論の意見を呼びました。 ある意見は、中国政府の圧力に屈しなかった勇気ある決断を称賛し、中国人観光客のマナー問題解決につながったと評価しました。 特に、世界中の多くの宿泊施設が同様の問題を抱えている中で、アパホテルの決断は勇気を与えました。 一方、歴史認識問題への配慮不足や[たった5%]という発言を人種差別だと批判する声も寄せられました。しかし、アパホテルの[嫌なら来るな]という戦略は、現代の企業経営における革命的な転換点となりました。 売上高は2017年の115億円から2024年には1912億円へと16倍以上に拡大し、営業利益も大幅に向上しました。 この成功は、短期的な売上減少を恐れず、長期的な企業価値向上を追求した戦略的な判断にありました。 問題のある顧客層が自然に淘汰されることで、理想的な顧客構成を実現し、量より質を重視する経営方針が見事に功を奏しました。 アパホテルは、炎上という最大の危機を最大の機会へと転換することに成功しました。 この革新的な経営手法は、今後も多くの企業にとって貴重な指針となります。