[前編]避難所の「共助の強要・クレクレ問題」は本当?|避難所の実態と課題[そなえるTV・高荷智也]

[前編]避難所の「共助の強要・クレクレ問題」は本当?|避難所の実態と課題[そなえるTV・高荷智也]

共助の強要とは

  • 共助の強要とは、災害時の避難所において、個人が持参した食料や防災グッズなどの物資を、他の避難者と分け合うことを、半強制的に求められる状況を指す。
  • これは本来、自発的な助け合いであるべき[共助]が、周囲や避難所の雰囲気によって強制される形になってしまう現象である。
  • [共助]の外部からの強制は、完全に常識から逸脱した行為であり、求め方によっては違法行為である〔強要罪〕。

共助の強要が発生する背景

  • 大規模災害が発生すると、避難所には自治体が備蓄した物資が用意されているが、その量は避難所の定員分しかない。
  • 実際の避難者が定員を上回る場合や、支援物資の到着が遅れる場合には、物資が著しく不足する。
  • このような状況下で、個人が持ち込んだ物資が目立つと、[みんなのために分けてほしい][困っている人に譲るべきだ]という圧力が生まれやすくなる。

共助の強要の具体的な事例

  • 持参した食料や飲料水を全員で分け合うために没収される。
  • 個人で用意した寝具やエアマットを、他の避難者に譲るよう求められる。
  • モバイルバッテリーなどの私物を貸したまま返却されない。
  • [あなたは持っているのだから、持っていない人に分けるべきだ]という同調圧力がかかる。

共助の強要の問題点

  • 共助の強要は、本来の自主的な助け合いの精神から逸脱し、個人の備えや努力が尊重されなくなる危険性を持つ。
  • また、物資の分配を巡るトラブルや不公平感、避難者同士の人間関係の悪化を招く要因となる。

共助の強要への対策と心構え

  • 避難所では物資が不足する可能性が高いため、できるだけ自分で必要なものを持参することが重要である。
  • 共助は強制されるものではなく、あくまで自主的な行動であるべきである。
  • 事前に地域の防災訓練や避難所運営のルールを確認し、トラブルを未然に防ぐ意識を持つことが望ましい。
  • 物資の分配や共助のあり方について、避難所内で話し合いの場を設け、公平で納得できる運営を目指すことが大切である。

避難所の定員と受け入れ状況

  • 多くの自治体では、避難所の定員は住民全体の1〜2割程度しか確保されていない。
  • 避難所は自宅を失い行き場のない人のための施設であり、全住民を収容することは想定されていない。
  • 例えば東京都では人口約1400万人に対し避難所は3200箇所、収容人数は約320万人分であり、受け入れ可能率は約2割にとどまる。
  • 名古屋市では人口232万人に対し避難所は887箇所、収容人数は約26万8000人分〔11.6%〕、大阪市では人口275万人に対し避難所は558箇所、収容人数は約61万人分〔22.2%〕である。
  • このような状況は全国的にほぼ共通している。

避難場所と避難所の違い

  • 命を守るための避難場所は、原則として全住民分が用意されているが、屋外のグラウンドなどである場合も多い。
  • 一方、避難所は生活の場であり、全員分のスペースは確保されていない。
  • 大規模災害時には避難所のキャパシティを超え、場所も物資も不足する事態が発生しやすい。

避難所の規則と運営

  • 避難所の運営ガイドラインやマニュアルは事前に作成されるが、実際の細かい運用ルールは現場の運営者が決める。
  • 災害が大規模になるほど想定外の状況が多くなり、通常では考えられないルールが生じることもある。
  • 運営は自治会や町内会、自主防災組織が担うが、役員は専門家ではなく、たまたまその年の担当者である場合が多い。
  • そのため、避難所のルールは運営者の属性や考え方に大きく左右されやすい。

避難所のルールの柔軟性と問題点

  • リーダーや役員の価値観によって、ペットの扱いや喫煙所の設置、バリアフリー対応、女性への配慮など、避難所の環境が大きく変わる。
  • 運営に積極的に参加することで、避難所環境の改善も可能であるが、ルール作りは非常に属人的である。

物資不足と[モノ]問題

  • 被災者が多くなると、避難所は場所も物資も不足しやすくなる。
  • 災害直後の避難所では、その場でルールが決められ、通常とは異なる状況が生じやすい。
  • 備蓄品や個人の持ち物を全員で分け合うよう求められることがあるが、個人の物資を受付で回収し平等に分配するというルールは、法律やガイドラインには存在しない。

共助の強要とクレクレ問題

  • 避難所では、持参した備蓄品や便利な道具を[困っている人のため]として回収されたり、他人に譲るよう求められることがある。
  • しかし、災害時は全員が等しく困難な状況にあり、共助は余裕の中から生まれるものである。
  • 自分の命に関わる物資は、正当な理由で断っても問題ない。

避難所でのトラブルと対応

  • モバイルバッテリーを貸したまま返却されなかったなどのトラブルは、災害時に限らず日常でも起こり得る。
  • 自分の備蓄品を守るためには、断る勇気も必要である。
  • 法律や原則に従えば、個人の備蓄品を強制的に回収されることはない。
  • 現実には周囲の雰囲気や同調圧力で断りにくい場合も多いが、毅然とした対応が求められる。

備えの意義と心構え

  • [どうせ避難所で取り上げられるから備えても無駄]と考えるのではなく、自分や家族を守るための備えを続けることが大切である。
  • 避難所での物資問題や共助の強要に対しては、法律や原則を理解し、必要な時は断る勇気を持つことが望ましい。

[後編]対策編!避難所の「共助の強要・クレクレ問題」への3つの対処法[そなえるTV・高荷智也]

[後編]対策編!避難所の「共助の強要・クレクレ問題」への3つの対処法[そなえるTV・高荷智也]

[共助の強要]や[クレクレ問題]への具体的な対策

  • 本動画は、避難所における[共助の強要]や[クレクレ問題]への具体的な対策について解説するものである。
  • 助け合いを重視する方ではなく、自分と家族を守りたい方に向けた内容である。

対策の三本柱

  • 避難所での物資問題への対策は、以下の三つである。
    1. 避難所での立ち居振る舞い
    1. 短期的なセルフ疎開
    1. 自宅での在宅避難
  • 本稿では、特に避難所での立ち居振る舞いについて詳述する。

目立たない備蓄食の選び方

  • 避難所では、目立つ食事や匂いの強い食べ物は周囲の反感や[分けてほしい]という要求を招きやすい。
  • そのため、音や匂いが目立たず、常温で食べられ、食器不要の備蓄食を選ぶことが望ましい。
  • ゼリー飲料や保存クッキー、カロリーメイトなどが適している。
  • 美味しい備蓄食は在宅避難や車中泊で活用し、避難所では地味で目立たない食事を心がけるべきである。

防災グッズの管理方法

  • 避難所では、持ち物を見せないことが重要である。
  • 防災リュックの中に予備のエコバッグや収納袋を用意し、物資を目立たないように管理する。
  • スマートフォンの充電なども、バッグやポーチの中で行い、周囲に気付かれない工夫が必要である。
  • 目立つ行動や物品は[貸して][分けて]と言われる原因となるため、使用時もできるだけ隠すことが望ましい。

地味な色の防災グッズの活用

  • 寝袋やクッションなどの防災グッズは、地味な色を選ぶことで、避難所内で目立たずトラブルを避けやすい。
  • 特に女性や子供が使う場合は、華やかな色よりも落ち着いた色のものが安全である。
  • クッション型寝袋やトートバッグになるクッションカバーなど、日常でも使える地味なアイテムが有効である。

予備の装備品を用意する

  • ライトなどの装備品は、貸してほしいと頼まれることが多い。
  • 予備の安価なライトを用意し、万が一貸して戻ってこなくても困らないように備えることが重要である。
  • 100円ショップの製品でも十分対応できる。

まとめ

  • 避難所では、目立たず、物を見せず、必要な装備は予備を用意することがトラブル回避につながる。
  • 自分と家族を守るためには、備蓄品や防災グッズの選び方・管理方法に工夫が必要である。

予備品の活用と対応策

  • 予備の物品をリュックに入れておき、[良ければどうぞ]と差し出すことで、その場を円滑に収めることができる。
  • 返却された場合は信頼できる相手と判断でき、返ってこなければ今後の付き合いを避ければよい。
  • 食べ物も[1つだけ余分がありますので、どうぞ]と対応することで、無理に断るストレスを減らせる。
  • さらに、[さっき隣の方に渡しましたので、そちらで分け合ってください]と周囲に伝えることで、他の人同士で解決させる方法も有効である。
  • 予備品は運営本部に提供し、[必要なら本部に言ってください]と対応するのも一つの手段である。

弱者であることを伝える

  • [私が弱者です]と伝えることで、トラブル回避につなげることができる。
  • アレルギー対応食しか食べられない、持病があるなどの理由を伝えれば、無理に物を奪おうとする人は少ない。
  • 災害時は誰もが弱者であり、自分のための備えを主張することは正当である。

短期的なセルフ疎開

  • 被災地から一時的に離れ、家族や親戚、友人宅、ホテルなどに避難する方法がある。
  • 被災地を離れることで、避難所の負担を減らし、残った人への支援が行き渡りやすくなる。
  • 避難所への避難は義務ではなく、他の選択肢があれば積極的に利用すべきである。

在宅避難のすすめ

  • 自宅が無事であれば、在宅避難を選択することができる。
  • 自動車での車中泊や庭でのテント生活も選択肢となる。
  • 在宅避難には、建物の耐震化や家具の固定、消火器の準備などの安全対策が必要である。
  • また、停電や断水、買い物ができない状況に備え、最低3日分、できれば1週間分の水や食料、必要な生活用品を備蓄することが重要である。

まとめ

  • 避難所での[共助の強要]や[クレクレ問題]への対策として、予備品の活用、弱者であることの主張、セルフ疎開、在宅避難が有効である。
  • 備えた物資はまず自分と家族のために使い、他人に無理に譲る必要はない。
  • 備えを怠る理由にせず、常に防災意識を持ち続けることが大切である。

書籍の紹介

  • 在宅避難や防災備蓄については『今日から始める家庭の防災計画』〔徳間書店、2023年〕に詳しく解説されている。
  • 具体的な防災テクニックや家庭でできる備えについて知りたい場合は、書籍や動画の概要欄を参照してほしい。