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安冨歩先生が関所とおっしゃるものは、私が感じ続けてきたトールゲート〔料金所〕のことだと思う

Amazon.co.jp: 初版 『 経済学の船出 ー創発の海へ 』 安冨歩/著 一月万冊復刊プロジェクト : 文房具・オフィス用品
安冨歩教授が提唱する[関所]の概念は、提供されたテキストに基づくと以下のように集約されます。

安冨歩における[関所]の概念

  • 定義:[関所]とは、社会におけるコミュニケーションや経済活動の[結節点]を独占的に支配し、そこを通過するものから利得を吸い上げる仕組みのことです。
  • 富の源泉としての性質:経済における利益の本質は、価値の創造そのものではなく、この[関所]を築いて独占的な支配権を得ることにあります。
  • 国家と官僚システムの実態:現代日本において、国家権力はこの[関所システム]の集積体と化しています。 官僚が自己の利権〔天下り先の確保や老後の安泰〕を守るために、不透明な[基金]や[外郭団体]を制度上の[関所]として設置し、国民の資産をそこに還流させる構造を指します。
  • 社会停滞の要因:高度成長期にはこの仕組みが成長の原動力にもなりましたが、現在は[本来の目的〔政策〕]が[関所の維持〔利権〕]へとすり替わっており、不必要な公共支出や金利負担を生み出すことで、日本社会の成長を阻害する最大の要因となっていると説いています。

国民に隠された政府の20兆円。会計検査院がこの悪質な基金の内容を解明。池亀彩・京都大学教授。安冨歩・東京大学名誉教授。一月万冊|日本の補助金基金制度は、国会の監視を逃れて巨額の税金をブラックボックス化させ、官僚の天下り構造や特定企業への利益供与を維持するための装置と化しており、国民は使われない資金の金利負担まで強いられている。日本社会の停滞と不条理の根源は、官僚システムが自己の利権保護のために国家の仕組みを[関所]として利用し、国民の資産を不透明な基金や事業へと還流させている構造にある。この仕組みは戦後の高度成長期には原動力として機能したが、現在は成長を阻害する要因となっており、国民がこの明白な利権構造の論理を理解し、正当な怒りを持って変革を求めることが停滞を打破する唯一の道である。

国民に隠された政府の20兆円。会計検査院がこの悪質な基金の内容を解明。池亀彩・京都大学教授。安冨歩・東京大学名誉教授。一月万冊

国家の資産が国民の預かり知らぬ場所で不透明に運用されている

京都大学の池山教授は、日本の国家予算が国民から実質的に盗まれている状況にあると指摘する。 会計検査院や国会図書館の報告によれば、約20兆円もの巨額な資金が国民の代表である国会のコントロールが及ばない場所に蓄積されている。

国民1人あたり20万円に相当する巨額の資金が使途不明となっている

20兆円という金額は、日本の人口を1億人と仮定した場合、国民1人あたり20万円に相当する。 4人家族であれば80万円という大金が、知らぬ間に財布から抜き取られ、どこかに積み上げられている計算になる。

補助金基金という仕組みが国会の監視を逃れる温床となっている

これら巨額の資金の行き先は、補助金基金と呼ばれる制度である。 本来、補助金は単年度ごとに議会で審議されるべきものであるが、基金化することで複数年にわたる予算を一括で確保し、国会のチェックを回避している。

250を超える膨大な数の基金を監視する体制が決定的に不足している

現在、日本には250以上の基金が存在し、それぞれに個別の帳簿と管理の手間が発生している。 一方で、これらを監視する会計検査院の職員数や、実務能力を持つ国会議員の数は、システムの巨大さに対して圧倒的に少ない。

基金の運用実態は外郭団体からパソナなどの民間企業へ丸投げされている

基金の具体的な運用実態として、中小企業庁の事例が挙げられる。 中小企業庁は1.1兆円規模の事業を外郭団体へ交付し、その団体はさらにパソナなどの民間企業へ事務局運営を241億円で丸投げしている。

広告代理店や人材派遣会社が政府事業の体裁を整えるために介在する

パソナや電通といった企業は、政府のネットワークを利用して事業の体裁を整える役割を担っている。 多額の委託費が支払われ、システム構築や動画制作などの名目で複数の事業者に再委託が繰り返される構造が存在する。

20兆円もの資金が活用されずに積まれたまま金利負担のみが発生している

問題の本質は、35兆円もの予算を投入しながら、20兆円が使われずに残っている点にある。 国は基金のために国債を発行しており、国民は使われない資金に対して多額の金利を支払い続けるという不利益を被っている。

責任ある財政を掲げながら実態は無責任な予算の積み増しが続く

高一政権下でも、既存の基金が余っているにもかかわらず、補正予算でさらに新しい基金が作られている。 物価高対策などの名目を掲げながら、実際には調査費などで資金が費消され、本質的な解決には至っていない。

日本の議会制民主主義は予算の厳格な管理機能を喪失している

イギリスなどの議会では、公金の使い道が厳格に審議され、議会の承認なしに1ポンドたりとも支出されることはない。 対して日本は、国会が予算の細部をチェックする機能を事実上失い、基金による予算のブラックボックス化を許容している。

官僚の天下り先の維持が国家政策の決定基準となっている

石井紘基議員が指摘したように、日本の政策決定は官僚の天下りポストの維持や、老後の安泰を最優先に行われている。 この目的を阻害する政策は実現されず、これを促進する政策ばかりが優先されるという歪んだ構造が定着している。

国立大学の法人化と大学院重点化が学者人生における大きな転換点になる

著者の学者人生において、国立大学の法人化と大学院重点化という2つの大きな出来事が起きた。 当初はこれらの改革がもたらす理不尽な状況に苦しんでいたが、その背後にある論理を理解したことで深い納得を得た。

北海道大学の数学者が文部科学省の天下り先確保の意図を指摘する

北海道大学の数学者が、国立大学の法人化は文部科学省の役人が天下り先を確保するために行われているという主旨のメールを連日送ってきた。 著者は当初これを陰謀論と見なしていたが、10年後にその主張が事実であると確信した。

大学改革における民間人の登用が役人の天下り先を隠すダミーとして機能する

大学改革の一環として実務家を登用する仕組みにおいて、3人程度の民間枠は実態を隠すためのダミーである。 実際にはその枠を利用して、2年程度の任期で現役の役人やOBが大学のポストに送り込まれている。

役人が東京大学教授の経歴を得ることで退職後の再就職を有利に進める

役人が2年間ほど東京大学の教授ポストに就くことは、退職後のキャリア形成において極めて有利に働く。 実務上の貢献や教育活動を一切行わなくても、東京大学教授という経歴がその後の他大学への採用を容易にする。

役人が過酷な労働環境の代償として大学での休息を正当化する

深夜まで及ぶ過酷な官僚業務に従事してきた役人にとって、大学でのポストは一種の休息場所として機能している。 午前1時に出勤し朝3時に政治家に呼び出されるような生活の報いとして、東大での平穏な時間を享受している。

世界の不条理の背景に役人の個人的な利益追求という論理を見出す

この世界の理不尽な仕組みは、役人が自身の生活や利権を守るために構築したものである。 世界が純粋な不条理ではなく、特定の個人の利益という明確な理由によって動いていると理解したとき、著者の心に平穏が訪れた。

福島第一原子力発電所の事故も利権構造の延長線上の必然として理解する

原発事故も、電力供給という本来の目的ではなく役人の老後の生活保障が優先された結果として起きた。 組織の目的がすり替わっている以上、あのような適当な管理体制の下では事故の発生は必然であった。

日本の高級官僚の給与水準が欧米諸国と比較して極めて低く設定されている

日本の高級官僚の給与は、アメリカやヨーロッパの同等の職位にある者と比較して4分の1程度に留まっている。 欧米では企業の社長並みの高額な報酬が支払われるが、日本では国民の反発を懸念して給与を上げられない。

役人の個人的な利益を合法化するコストが国民負担を増大させている

役人が自身の財布に1億円を入れるために、新しい産業の創出や維持を名目に国民の財布から100億円を支出する構造がある。 直接高額な給与を支払う方が、利権構造を維持するための無駄な公共支出を減らすことができる。

日本社会が抱える停滞の病理を理解することが解決への第一歩になる

日本社会の停滞は、解決不能な不条理ではなく明確な利権構造という理由によって引き起こされている。 国民がこの仕組みの理不尽さに対して正当な怒りを表明すれば、社会の問題は解決へと向かう。

基金や調査名目で巨額の血税が実態のない事業に費やされている

20兆円規模の資金が国民の届かない場所に積み上げられ、その一部は電通やNTTデータなどへの不透明な調査委託費として浪費されている。 責任ある積極財政の名の下に、国民1人あたり数万円の負担が新たに積み増されている。

経済における利益の源泉はコミュニケーションの結節点に設けた関所にある

著者は著作[経済学の船出]の執筆過程で、利益を出す唯一の方法は関所を築くことだと結論した。 コミュニケーションの結節点を独占的に支配し、そこに関所を設けることで巨額の富が発生する。

国家権力が関所システムと結びつき巨大な利権集団を形成する

関所システムはあらゆる時代において国家権力と結びつき、その集積体が国家の実態を形作る。 議会や裁判所、試験採用制度などは本来、この関所による利権の独占をコントロールするために構築された制度である。

戦後日本の高度成長は官僚システムと利権構造の結びつきによって支えられた

戦後日本は関所のコントロールに失敗したが、皮肉にも官僚システムと資本主義の強い結びつきが復興と成長の原動力となった。 経済が成長している期間は、新しい価値の創出が利権による停滞を上回っていた。

経済成長の停止により関所と国家の結びつきが社会の停滞を加速させる

経済成長が止まった[失われた30年]において、関所システムは社会を停滞させる負の力として作用している。 かつて特別会計が担っていた利権の分配機能は、批判を避けるために基金という形式に姿を変えて存続している。

スペシャル動画付きの著作セット販売を通じて社会問題の根源を提示する

[経済学の船出]と[複雑さを生きる]のセット販売を通じて、社会問題の根源と乗り越え方を提示する。 1月6日までの期間限定で、清水裕子氏との対談動画を含む特別価格での提供を行い、読者の理解を深める機会とする。