全体の要約
ドラマ『VIVANT』のモンゴルを舞台とした情報戦略、高市早苗自由民主党総裁就任直後の南モンゴルに関する政治的声明、そしてドラマ続編の発表という一連の流れは、資源を武器とする中国の独占を崩し、モンゴルからのレアアース輸入を目指す日本の地政学的な戦略と情報戦略が連動していることを示す。 モンゴル国の第三の隣国政策、日本国とアメリカ合衆国による資源探査や軍事協力の推進、高市早苗による南モンゴル問題への言及は、中国のレアアース独占を打破し、ウランを含むモンゴルの戦略的資源を確保しようとする地政学的な動きを示す。 ドラマ『VIVANT』の放送は、この地政学的変化に向けた国民の意識を誘導する情報戦略であった。
アメリカと日本はモンゴルとの関係を強化し中国のレアアース独占を打破しようとしている
ドラマ『VIVANT』が記録的な大ヒットとなった背景にTBSの巨大な投資が存在する
2023年7月に放送された日本のドラマ『VIVANT』は記録的なヒットを記録した。 平均視聴率は19.9%で、世界視聴率は21.7%に達した。 TBSは総額10億円から20億円の制作費を投じたとされるが、これは通常の民放ドラマの3倍以上の異例の予算規模であった。 福澤克雄監督は制作が赤字であると認めた。
TBSは半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンの株式を大量に保有する
TBSは、世界第3位の半導体製造装置メーカーである東京エレクトロンの株式を772万株、発行済株式の4.38%を保有する。 東京エレクトロンは2023年に過去最高益の4715億円を記録し、半導体バブルで巨額の利益を生み出した。 東京エレクトロンは1963年にTBSの技術局長の出資〔当時500万円〕で設立された経緯があり、東京エレクトロンはTBSにとって[金のなる木]である。
半導体製造には不可欠なレアアースはモンゴルに埋蔵されている
半導体製造装置や半導体の製造には、レアアース〔ネオジム、ジスプロシウム、テルビウムなど〕が不可欠な物質である。 これらのレアアースはモンゴルに大量に埋蔵されている。 ドラマ『VIVANT』の舞台はモンゴルであった。
ドラマ『VIVANT』の物語の核心は半導体の原料となる蛍石の採掘権をめぐる争いであった
ドラマは、巨額の誤送金事件をきっかけに、大手商社に勤める平凡なサラリーマンが国際的な陰謀に巻き込まれていく物語である。 第9話で、物語の核心はフローライト〔蛍石〕という半導体の原料となる鉱石の採掘権をめぐるモンゴルでの争いであると明かされた。 2000万人を超える視聴者が、ドラマ『VIVANT』を通じてモンゴルを資源国として意識した。
ドラマにはフリーメーソンのシンボルであるプロビデンスの目が映し出された
ドラマの中で壁に描かれたプロビデンスの目〔万物を見通す目〕というシンボルが一度だけ映し出された。 プロビデンスの目はフリーメーソンのシンボルとして知られる。 TBSは半導体バブルで巨額の利益を得て、半導体製造に必要なレアアースはモンゴルに埋蔵されている。 この背景から、モンゴルを舞台にしたドラマの真の目的は、国民の意識をモンゴルに向けさせ、資源国としてのモンゴルを日本人に認識させる情報戦略であるとの見方もできる。
2025年10月9日に自民党総裁の高市早苗が南モンゴル問題について中国政府を非難した
ドラマ『VIVANT』放送から約2年後の2025年10月9日、自由民主党総裁に就任したばかりの高市早苗が、衆議院第一議員会館での国際会議で南モンゴル問題に関する声明を出した。 高市早苗は、中国共産党政府による南モンゴルでの人権弾圧と、言語・文化の抹消を目的とした同化政策に憤りを表明した。 中国政府は総裁就任わずか5日後の異例の速さでの高市早苗の発言に対し、即座に厳重抗議を行った。
2025年10月にドラマ『VIVANT』の続編製作が公式発表された
高市早苗の政治的声明と全く同じ2025年10月に、ドラマ『VIVANT』の続編製作が公式発表された。 続編は2026年に日曜劇場枠での放送が予定されている。 堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、二宮和也、松坂桃李ら豪華キャスト26名が再び集結する。 ロケ地にはアゼルバイジャンも追加され、更にスケールアップした。
高市早苗は2010年のレアアース禁輸措置の経験から南モンゴル問題に取り組んでいる
高市早苗の行動の背景には、2010年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後のレアアース対日輸出事実上停止の経験がある。 当時総務大臣であった高市早苗は、日本の自動車産業が大混乱に陥った現場を見ていた。 レアアースは電気自動車のモーターやスマートフォンのハードディスクなどに不可欠であり、世界の生産量の約70%、精錬の90%以上を中国が握っている。 中国は必要な物質の供給を止めるだけで相手国の経済を崩壊させることができる[見えない戦争]を仕掛けた。
中国が独占するレアアースの主要産地は内モンゴル自治区のバヤンオボ鉱山である
中国が独占しているレアアースの主要産地は、内モンゴル自治区のバヤンオボ〔日本語名:包頭〕と呼ばれる地域である。 ここに世界最大級のレアアース鉱山があり、1927年に発見されたこの鉱山が中国のレアアース戦略の核となっている。 中国の鄧小平はかつて[中東に石油あり、中国にレアアースあり]と述べ、レアアースは国家戦略の核に位置づけられた。
内モンゴルとモンゴル国は地質学的に同一でありレアアースが埋蔵されている
レアアースはアメリカやオーストラリアなど世界中に埋蔵されているが、環境規制の緩い中国に採掘と精錬が集中した。 中国が独占している主要産地である内モンゴルと、モンゴル国は地質学的にほぼ同一である。 太古の時代にこの地域はモンゴル・ホウツァイと呼ばれる深くて広い海であったため、多様な鉱物資源に恵まれた。 モンゴル国にも内モンゴルと同じようにレアアースが埋蔵されていることが確認されているが、まだ本格的な開発は始まっていない。
高市早苗の南モンゴル支援は中国の弱体化とモンゴル国からのレアアース輸入の布石である
高市早苗が南モンゴルを支援する議員連盟の会長である表面的な理由は、内モンゴルで起きている文化抹消や言語弾圧などの人権問題への憂慮である。 しかし、その裏には、内モンゴルの弾圧を国際社会に示すことで中国の本質を暴く目的が存在する。 同時にモンゴル国との連帯を強化し、レアアースの中国依存から脱却するための布石を打つという戦略的な意図も存在する。
モンゴル国がレアアース開発を本格化すれば中国の独占が崩壊する
もしモンゴル国がレアアースの開発を本格化させ、日本、アメリカ、ヨーロッパがモンゴルからレアアースを安定的に輸入できるようになったら、中国の独占は崩壊する。 中国が握っていた[資源を武器にする]という手段は無力化される。 高市早苗が総裁就任わずか5日後に南モンゴル問題を取り上げたことは、この構造の変化の始まりを示している。
内モンゴルではモンゴル人の文化と言語を抹消するための組織的な弾圧が続いている
内モンゴル自治区は中国北部、日本の約3倍の面積に約400万人のモンゴル人が暮らしており、モンゴル国〔人口約350万人〕よりも多くのモンゴル人が住んでいる。 1947年に設立された内モンゴル自治区では、文化大革命時に当時の人口の約20%が犠牲になるなどの組織的な弾圧が行われた。 2020年9月には、中国政府がモンゴル語での授業を大幅に削減し、中国語での教育を強制する政策を発動し、抗議運動は弾圧された。
モンゴル国には内モンゴルと同じ資源が眠っており高市早苗の戦略の核心である
名古屋大学の地質学者は、2009年からモンゴルで共同研究を続けており、オユ・トルゴイ銅・金鉱山ではフル稼働すれば世界4位の銅山となる見込みがある。 モンゴル国には、内モンゴルと同じようにレアアースが埋蔵されており、まだ本格的な開発は始まっていないものの地質学的には確認されている。 これが、高市早苗が南モンゴル問題を批判し、モンゴル国との連帯を強化することで、中国依存からの脱却を目指す戦略の核心である。
高市早苗の戦略は人権問題の解決とレアアース中国依存の布石を同時に実現する
高市早苗が南モンゴルを支援する議員連盟の会長として内モンゴルの弾圧を批判することは、人権問題の憂慮であると同時に、内モンゴルの弾圧を国際社会に示すことで中国の本質を暴くという意図がある。 同時にモンゴル国との連帯を強化し、レアアースの中国依存の布石を打つという二つの目的が同時に進行している。 モンゴル国がレアアース開発を本格化させれば、中国の独占が崩れ、中国政府は内モンゴルを支配する理由の一つを失うこととなる。
モンゴル国はロシアと中国に挟まれた人口密度の低い内陸国である
モンゴル国は面積が日本の約4倍であるにもかかわらず、人口はわずか350万人であり、世界で最も人口密度の低い国の一つである。 モンゴルの北にはロシアがあり、南には中国があり、この二つの大国に挟まれた内陸国である。 地理的な視点から、モンゴルは中国とロシアが直接国境を接しないための緩衝地帯としての役割を果たす。
モンゴルの経済は中国への依存度が非常に高く第三の隣国政策を掲げている
モンゴルの輸出の約90%が中国向けであり、石炭、銅、カシミヤなどのほとんどが中国に売られている。 中国はモンゴルにとって最大の貿易相手国であり、モンゴルの経済は中国に強く依存している。 モンゴル政府はこの依存による圧力を理解しており、ロシアと中国の二大国だけに頼らないために、日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国を第三の隣国とする政策を掲げている。
アメリカと日本はモンゴルとの関係を強化し中国のレアアース独占を打破しようとしている
中国のレアアース独占を打破するため、アメリカと日本はモンゴルとの関係を深めている。 アメリカとモンゴルは2019年に軍事協力を含む戦略的な協力関係を強化した。 毎年、モンゴルではアメリカ軍、モンゴル軍、日本の自衛隊が参加する軍事演習カークエストが行われている。
日本はJOGMECを中心にモンゴルのレアアース探査とインフラ整備を支援する
日本は静かに、しかし確実にモンゴルへの浸透を図っており、2011年に石油天然ガス・金属鉱物資源機構〔JOGMEC〕がモンゴルでレアアースの共同探査を開始した。 内モンゴルと同じ地質構造を持つモンゴルでのレアアース開発には、日本の技術や資金が必要である。 日本は探査、採掘、環境保護の技術を提供することで開発を支援する。
日本はレアアース輸送ルート確保のためモンゴルのインフラと人材育成を支援している
日本はモンゴルのインフラ整備にも大きく関わっており、首都ウランバートルの新しいチンギス・ハン国際空港は日本の支援で建設された。 また、レアアースの採掘と輸送のための高速道路建設も日本の技術協力で進められている。 さらに、日本はモンゴルに鉱山技師や地質学者を派遣し、モンゴルの若者に地質学や資源工学を学ばせるなど、人材育成にも投資している。
中国はモンゴルのレアアース開発による経済的な影響力の低下を危惧している
モンゴルのレアアース開発が本格化すると、モンゴルは中国以外の国々にも資源を売ることが可能になり、中国への依存度が下がる可能性がある。 モンゴルのレアアースが世界市場に出回れば、中国の独占が崩れ、レアアースという武器が無力化されるため、中国は焦燥感を感じる。 中国は2016年のダライ・ラマ14世招待時に貨物検査の厳格化などで圧力をかけ、モンゴル経済に大打撃を与えた。
ロシアは天然ガスパイプライン建設でモンゴルを自国側につなぎとめようとしている
2024年9月、ロシア政府は総工事費約30億ドルの天然ガスパイプラインをモンゴルに建設し、エネルギーを供給するという計画を提案した。 モンゴルで西側諸国の軍隊が訓練を続けている状況に対して、ロシアはパイプライン提案でモンゴルを自国側につなぎ留めようとする意図を持つ。 2019年8月にはモンゴルがアメリカと軍事協力を含む包括的協力関係を締結し、2024年の軍事演習カークエストにはアメリカ軍兵士約1,000名が参加した。
高市早苗は南モンゴル独立による統一モンゴル誕生で中国の弱体化を狙う
内モンゴル自治区にはモンゴル国〔人口約350万人〕より多い約400万人のモンゴル人が住んでおり、合計すると人口約750万人のモンゴル民族がいる。 もし内モンゴルが中国から独立しモンゴル国と統一すれば、世界最大級のレアアース鉱山であるバヤン・オボ〔包頭〕がモンゴルのものになり、中国はレアアースという武器を失う。 さらに、内モンゴルとモンゴル国には核兵器の原料であるウラン鉱床も存在し、世界のウラン埋蔵量の約2%がこの地域にあると推定される。
南モンゴル独立運動への黙認はアメリカが戦略的資源に近づく機会を意味する
高市早苗が南モンゴル問題を取り上げた際、中国政府は抗議したがアメリカ政府は何も言わなかった。 これは、内モンゴルの独立運動を支援し、中国を内部から弱体化させることへのアメリカの黙認と解釈できる。 統一モンゴルが誕生すれば、アメリカはレアアースとウランという戦略的資源に近づくことができる。
資源開発の主導権はアメリカ企業に移り日本は依存先が変わる可能性が高い
統一モンゴルが誕生しても、レアアースやウランの大規模な鉱山開発には数千億円の資金が必要であり、モンゴルに技術も資金もない。 外国企業が資金と技術を提供し採掘することになり、日本企業も参加するが、最大の資金を出すのはアメリカ企業である可能性が高い。 例えば、モンゴルのオユ・トルゴイ銅・金鉱山はカナダ企業が開発しているが、大株主はアメリカの投資ファンドである。 この構造により、日本の依存先が中国からアメリカに変わるだけであり、中国の支配から逃れてもアメリカの支配下に入る可能性が生じる。
2027年という年は中国の権力構造変化とモンゴルの資源開発が重なる地政学的な転換点である
2027年は、習近平の三期目が終わり、中国の権力構造が変わる可能性がある年である。 この年にモンゴルの国会議員選挙、オユ・トルゴイ鉱山の完全稼働が重なる。 その混乱の中で、内モンゴルの独立運動が活発化する可能性がある。 高市早苗が語る[日本の独立]は中国からの独立を意味するが、その後の支配の形が中国からアメリカへ変わるだけという可能性も構造上存在する。
ドラマ『VIVANT』は世論形成の道具としてモンゴルへの意識を誘導した
2023年のドラマ『VIVANT』の放送、2025年10月の高市早苗の政治的メッセージ、そして2026年の続編放送という一連の流れは、情報戦略として機能した。 エンターテイメントはしばしば世論形成の道具として使われ、人々の意識は静かに誘導される。 ドラマを見た視聴者は[モンゴルは資源国であり、大国に挟まれた戦略的な国]という認識を持つようになった。
段階的な情報戦略により地政学的変化への世論の受け入れ準備が整う
ドラマによってモンゴルへの関心が高まった2年後に政治家がモンゴル問題を取り上げても、視聴者はそれを受け入れやすくなる。 これが情報戦略であり、3年かけて段階的に世論を形成する。 2027年に実際の地政学的変化が起きる前に、この情報戦略は国民の意識の儀式の準備を整えた。 内モンゴルの人々は資源をめぐる争いの中で最も苦しんでいる人々である。