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スコット・ベセント財務長官によるドル安誘導の行動は、トランプ政権の経済政策の根幹にあるマールアラゴ構想の一部であり、安全保障と通貨をセットにした圧力により、日本が40年前のプラザ合意と同じく、再びドル安誘導の調整役を押し付けられる可能性がある。支配層はすでにゴールドへと資産を移動させており、ドル後の世界でも支配層の優位性は変わらないという構造を理解し、通貨という幻想に振り回されずに本当の価値に気づくことが重要である。

ドルへの不信感は計画的な操作により生じている

トランプ大統領の予測不可能な行動とされる関税の発表や撤回は、市場を混乱させるための計画であると、メイは述べている。 通貨システムは人々の意識が生み出す信用というエネルギーの現れであり、通貨システムの構造を理解することは意識の覚醒につながる。 人々は今日これから、なぜドルが壊されようとしているのか、誰が本当に得をするのか、日本が同じ役割を押し付けられようとしているのか、という3つの課題を知る必要がある。

ベセント財務長官はソロスの手法を継承した人物である

権力構造を読み解く基本は、人物の過去と誰の下で育ったかを見ることであり、スコット・ベセント現アメリカ財務長官の経歴が重要である。 ベセント氏はイエール大学で政治学を学び、ジョージ・ソロス氏の下で約20年間投資の世界に入った。 ベセント氏はロンドンオフィスの責任者として1992年のポンド危機に関与した。 ソロス氏はポンドを空売りして一晩で10億ドル以上の利益を得た伝説的な投資家であり、ベセント氏は通貨を動かして巨額の利益を得るプロフェッショナルである。 ベセント氏は2013年にはアベノミクスによる円安を読み、約12億ドル〔日本円にして1800億円〕もの利益を上げた人物だ。 ベセント氏の現在の資産は推定6億ドル〔約900億円〕であり、ベセント氏はゴールドバグ、つまり金の信奉者としても知られている。

ベセント財務長官の言動と行動には矛盾がある

ベセント財務長官は公式には強いドル政策を支持すると明言しているが、実際の行動は言葉と異なりドルを弱くする方向に誘導している。 ベセント氏は日本銀行の利上げを支持する発言をしており、日銀が金利を上げれば円高、つまりドル安につながる。 ベセント氏はゴールドを歴史的な価値の保存手段と高く評価し、これはドルからの資金逃避を意味する。 ベセント氏はCBDC、中央銀行デジタル通貨には明確に反対の立場をとっている。 通貨市場で巨額の利益を得てきた人間にとって、言葉と行動を分離させることは基本中の基本である。 事前にドルを下げると宣言すれば、投資家が先にポジションを取り利益を得られなくなる。 この手法は、ソロス氏がポンドを攻撃したときと同じ手法であり、ベセント氏はこの師匠の手法を完璧に身につけている。

トランプ政権とソロスの弟子の関係は縦の構造の現れである

トランプ大統領がソロスの弟子であるベセント氏を財務長官に選んだことは、表向きのトランプ対ソロスという対立関係が、実は見せかけに過ぎない可能性を示す。 トランプ対ソロス、共和党対民主党、保守対リベラルという横の対立に人々の目は向けられている。 しかし、本当の構造は縦にあるのかもしれない。 ドルを弱くするという点において、トランプ政権とソロスの弟子であるベセント氏は同じ方向を向いている。 ベセント氏がソロスの下で学んだ技術は、今度はトランプ政権のために使われている。

ドル安誘導のマールアラゴ構想には安全保障が組み込まれている

トランプ政権が具体的に何をしようとしているのか、その設計図がマールアラゴ構想として存在し、世界中の専門家が注目している。 1985年9月22日、ニューヨークのプラザホテルでG5の財務大臣と中央銀行総裁が集まったプラザ合意は、日本の運命を大きく変えた。 G5はドル高是正のため強調してドルを安くすることで合意した。 プラザ合意後の円は1ドル240円からわずか2年ほどで120円台まで急騰した。 日本の輸出産業は大打撃を受け、町工場が次々と倒産した。 政府は金融緩和に踏み切り、公定歩合を戦後最低の2.5%まで引き下げた。 低金利によりお金は株と不動産に流れ込みバブル経済が発生した。 1990年のバブル崩壊により、株価・不動産価格は暴落し、銀行は不良債権の山を抱えた。 ここから日本の失われた30年が始まった。 1995年から2025年までの30年間で、日本の世界GDPに占める割合は17.8%から3.6%にまで縮小した。

日本が再び調整役を押し付けられる可能性が高い

マールアラゴ構想は正式な条約ではないが、トランプ政権の経済政策の根幹にある考え方として注目されている。 マールアラゴ構想の提唱者は大統領経済諮問委員会のスティーブン・ミラン委員長である。 この構想は、アメリカがドル安に誘導し貿易赤字を削減するために同盟国に協力を求める点ではプラザ合意と似ている。 しかし、マールアラゴ構想は安全保障と通貨をセットにしており、安全保障を人質にとった圧力をかける。 アメリカの軍事的な傘の下にいたいなら通貨でも譲歩するように、圧力をかけるのである。 この構想で調整役の候補国として名指しされている筆頭は日本である。 今年4月、トランプ大統領は解放の日と名付けた記者会見で大規模な関税を発表した。 中国には最高49%、同盟国である日本にも高い関税が課されると発表された。 市場は即座に反応し、ダウ平均株価は1日で8%近く暴落した。 ドルは急落し数年ぶりの安値をつけた。

関税の撤回はドルへの信任を揺さぶるための計画的な茶番であった

数週間後、これらの関税のほとんどは静かに撤回され、メディアはトランプ大統領が現実路線に転換したと報じた。 しかし、騒動は最初から計画されていた可能性がある。 目的は関税そのものではなく、投資家の信頼を揺さぶり、ドルへの信任を意図的に傷つけることだった。 関税発表で市場はパニックになり、投資家はアメリカは何をするかわからないと恐怖を感じた。 その恐怖がドル売りを加速させた。 目標としていたドル安が達成されたところで、関税は撤回された。 混乱そのものが計画の一部であり、発表と撤回という一連の行動を通じて、彼らは欲しいものを手に入れた。 関税という脅しを残しつつ、実際のドル安という果実だけを収穫した。 通貨システムは人々の信用というエネルギーが作り出したものであり、信用が揺らぐことは古いエネルギーの形が変わり始めていることを示す。

日本の金利が上げられない構造は円安を継続させる

歴史は繰り返されるというよりも、繰り返させられているのかもしれない。 40年前のプラザ合意では、急激な円高による不況を乗り切るため、政府と日銀は公定歩合を戦後最低の2.5%まで引き下げた金融緩和を実施した。 低金利であふれたお金は実体経済ではなく、株式市場と不動産市場に流れ込みバブル経済を発生させた。 そのバブル崩壊が日本の失われた30年につながった。 2025年現在、政府債務残高は対GDP比で約250%から260%と先進国の中で最も高い水準である。 国の一般会計支出のうち約4分の1が国債費、つまり借金の利払いと返済に消えている。 金利を上げると利払い負担が一気に膨らみ財政が破綻しかねない。 日銀が金利を上げられないから円は安いままになり、円安が続くから輸入物価が上がり国民生活は苦しくなる。

日本は20年から30年ごとに訪れる通貨システムの節目で調整弁として使われてきた

1971年のニクソンショックによるブレトンウッズ体制の崩壊、1985年のプラザ合意によるドル安誘導、2008年のリーマンショックを経て、2025年にはマールアラゴ構想という新たなドル安誘導の動きがある。 これらの出来事を並べてみると、約20年から30年ごとに通貨システムの大きな節目が訪れており、システムが限界に達するとリセットされることがわかる。 そのリセットの度に、日本は調整弁として痛みを引き受ける役割を押し付けられてきた。 通貨システムには設計された寿命があり、限界が来たら壊して作り直すという繰り返しの中で、日本は毎回痛みを引き受ける役割を押し付けられてきた。

支配層はドル信任の揺らぎを事前に知りゴールドへと資産を移動している

こうした通貨システムの変動が起きるとき、支配層と呼ばれる人々は一般の人々よりも先に動いており、その証拠はゴールドの動きに現れている。 2024年から2025年にかけて金の価格は市場最高値を何度も更新し、2025年10月には1オンス4000ドルを突破した。 各国の中央銀行は2024年に合計1045トンの金を購人した。 これは3年連続で年間1000トンを超える買い越しである。 欧州中央銀行は金がドルに次ぐ第二の準備資産に昇格したと発表した。 彼らはドルの信任が揺らぐことを事前に知っており、ドルから金へと資産を移動させている。 ベセント財務長官がゴールドバグと呼ばれているように、ベセント氏自身が金の価値を誰よりも理解している人物である。

CBDCと金本位制のどちらのシナリオでも支配層が得をする構造は変わらない

ドル覇権が揺らいだ後、世界はどうなるのかについていくつかのシナリオが考えられる。 一つ目のシナリオはCBDC、中央銀行デジタル通貨であり、現在世界の137カ国がCBDCの研究や開発を進めている。 アメリカは逆の方向に進んでおり、2025年、トランプ大統領はCBDCの禁止を大統領令で明記した。 代わりにアメリカが推進しているのはステーブルコインという民間が発行するドルと連動したデジタル通貨である。 CBDCが導入されると、全ての取引が政府に把握され監視される完全な管理社会への入り口になりかねない。

ドル後の世界における支配層の優位性は強化される可能性がある

二つ目のシナリオは金本位制への回帰である。 世界中の中央銀行が金を買い集めており、ベセント財務長官自身も金の信奉者であることから、金を裏付けにした新しい通貨システムが構想されている可能性は十分にある。 金本位制の復活は政府が好き勝手にお金を刷れなくなり、通貨の価値が守られるという安定をもたらすように思える。 しかし、今世界の金は各国の中央銀行と一部の超富裕層がすでに大量に保有している。 金本位制に戻れば、すでに金を持っている者がさらに有利になり、支配層の優位性は何も変わらず、むしろ強化されるかもしれない。

ゲームの構造を知ることで恐怖から自由になることができる

CBDCが導入されても、金本位制に戻っても、どちらのシナリオになったとしても、上が得をする構造は変わらない。 システムの形が変わっても、誰がそのシステムを設計し、誰が先に情報を得て、誰が先にポジションを取るのかという構造が変わらない限り、結果は同じである。 彼らが複雑なゲームをするのは、人々の信用、恐怖、不安、依存といったエネルギーを必要としているからである。 通貨システムはこれらのエネルギーを集め循環させる装置ともいえる。 彼らのゲームの構造を知った瞬間、人々はゲームのコマではなく観察者になり、恐怖に支配されず誰かの思惑通りには動かなくなる。 観察者が増えると、ゲームそのものが成り立たなくなる。

通貨という幻想から自由になるための視点を身につける

ソロスの弟子であるベセント財務長官が表では強いドルを唱えながら実際にはドル安を誘導している。 マールアラゴ構想の下で安全保障と通貨をセットにした新たな圧力が生まれようとしている。 日本が再び調整役にされる可能性がある。 支配層がすでにゴールドへと資産を移している。 ドル後に来る世界では構造そのものは変わらないかもしれない。 通貨とは、本来は価値の交換手段であり、それ以上でもそれ以下でもないはずである。 いつのまにか通貨そのものが価値だと思い込まされてきた。 お金がないと生きていけない、お金がある人が成功者だ、お金のために働くのが人生だという考えは、生まれた時からすり込まれてきただけであり、真実ではないかもしれない。

お金では買えない本当の価値に気づくことが重要である

朝の新鮮な空気、大切な人との笑い合い、夕焼けを見て心が静かになる平穏、健康な体で一日を過ごせることなど、お金では絶対に買えないものこそが本当の価値である。 ドルが上がろうが下がろうが、円が強くなろうが弱くなろうが、これらの価値は変わらない。 通貨システムがどう変わろうと、人の中にある何かは揺らがない。 彼らは通貨をコントロールすることで、人々の意識をコントロールしてきた。 お金への恐怖、お金への執着、お金への依存という感情を通じて、人々を動かしてきた。 しかし、本当の価値に気づいた人にはそのコントロールは届かない。 お金がなくても得られる豊かさがあると知っている人は、恐怖で動かされることがない。 お金を使わずに得られた豊かさを3つ見つけてみるなど、当たり前すぎて見過ごしているがお金では絶対に買えないものを意識するだけで、人の中で何かが変わり始める。 通貨システムが揺らぐ今だからこそ、私たちは本当の価値を取り戻すことができる。 彼らがどんなにシステムを操作しても、人の中にある光までは操作できない。 ドルがどうなろうと、人の価値は変わらない。