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【東大院特任教授が指摘】実はコメ価格を決めているのはJAではない!?(東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘)【ニュースの争点】

【東大院特任教授が指摘】実はコメ価格を決めているのはJAではない!?(東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘)【ニュースの争点】

東京大学大学院特任教授の鈴木宣弘氏が農業問題とJA批判について解説する

本日のニュースでは、東京大学大学院特任教授の信氏を招き、農業問題、特にJA(農業協同組合)批判について話を伺う。

米価高騰の原因はJAにない

現在、米価高騰の原因がJAにあるとの指摘が一部でなされているが、JAには米価を釣り上げる力がなく、むしろ米がJAに集まらなくなって困っている状況である。

業者による直接買い付けが増えJAの集荷率が大幅に低下した

米不足の影響で、多くの業者が農家に直接高値で買い付けに来るようになり、JAの集荷率は約3割にまで落ち込んでいる。

JAは米を確保して価格を操作する余裕がない

現在のJAは米を確保して価格を釣り上げるような状況には全くなく、そうした主張は事実と異なる。

食糧管理制度廃止後に米流通が多様化した

かつての食糧管理制度下では、全量を国が買い取る仕組みでJAを通じた集荷率はほぼ100%だったが、制度廃止後は流通が多様化し、農家がJA以外にも米を売るケースが増えた。

近年の米不足でJAの集荷率がさらに低下した

昨年の米不足により、他業者による直接買い付けが一層増加し、JAの集荷率はさらに下がった。

JA批判が意図的に強まっている

最近の米価高騰に際し、JAへの批判が意図的に強まっている。

JAは米価をコントロールできる立場にない

歴史的にも現在も、JAの集荷率が下がり続けており、JAが米価をコントロールしてきたという事実はない。

米価形成の主導権は買い手側にある

JA以外の業者が米を買う割合が増えたことで、流通・小売業者など買い手側の価格形成力が強くなり、農家はむしろ買い叩かれる傾向が強まった。

米価コントロールの主役は大手流通・小売業者である

価格をコントロールしてきたのは大手スーパーなどの買い手側であり、農家やJAはむしろ買い叩かれてきた。

JAが米価を釣り上げてきたという主張は誤りである

独占禁止法上も、農家やJAが不当に米価を操作してきたという事実はなく、むしろ農家側の交渉力低下が問題である。

独占禁止法上の問題は大手スーパーの優越的地位にある

独占禁止法上の問題があるとすれば、それは大手スーパーを中心とした優越的地位の濫用が問題となるべきである。

JAは農家の共同販売と相互扶助を目的に設立された

JA(農業協同組合)は、個々の農家が大口の買い手に買い叩かれるのを防ぐために共同販売を行い、価格形成力を高めることと、金融や共済などの相互扶助を目的として設立された組織である。

JAの信用・共済部門は農家を守るために作られた

JAの信用部門や共済部門は、農家が高金利で借金を強いられることや不測の事態に備えるため、農家自身が資金を持ち寄り助け合う仕組みとして作られたものである。

JAは地域の農家と住民を支える総合的な組織である

JAは農家だけでなく、地域住民も恩恵を受ける総合的な組織として、地域社会を支える役割を果たしてきた。

JA離れの背景には直接買い付け業者の増加がある

JAの集荷率低下の背景には、直接農家から買い付ける業者やルートが増加したことがある。

農家が個別に販売しても全体の価格が下がる構造になる

農家がJAを離れて個別に販売する動きが増えると、一時的には有利に見えても、全体としては買い叩かれる構造が強まり、米価が押し下げられる結果となる。

共同販売の重要性を再認識する必要がある

農家がまとまって共同販売を行うことが、全体の価格維持や交渉力の強化につながることを改めて認識する必要がある。

組合の弱体化は労働者の賃金低下と同じ構造である

農協の弱体化による農家の交渉力低下は、労働組合の弱体化による賃金低下と同じ構造である。

農協解体論の背景にはビジネス上の利害がある

農協が農業参入の障壁だとする意見の背景には、農業で利益を得たい人々のビジネス上の利害がある。

農協解体論者は小規模農家の排除と企業的農業の推進を目指している

農協解体論を唱える人々は、小規模農家を減らし、企業的な農業経営や大規模化を進めることで自らの利益を拡大しようとしている。

農業の成長産業化論は一部の業界の利益追求に基づく

農業を成長産業化すべきという主張は、一部の業界が自らの利益を追求するための論理であり、現場の農家を排除する動きにつながっている。

規制緩和による大規模企業の参入は限定的な利益しかもたらさない

新規参入や規制緩和によって大規模企業が農業に参入できるようにしても、結局は利益が見込める地域や作物にしか大企業は参入しないのが現実である。

日本とアメリカの農業規模や土地条件は根本的に異なる

アメリカやオーストラリアのような大規模農業を日本で実現するのは、土地の広さや区画のまとまり方が全く異なるため、現実的ではない。

日本の農地は分散しており大規模化が困難である

日本の農地は100ヘクタール規模でも1000箇所以上に分散している場合が多く、オーストラリアのように一つの区画が広大という状況とは全く異なる。

規模拡大による競争力強化論は現実的でない

規模拡大すれば国際競争に勝てるという主張は、同じ土俵での競争ができない日本の実情を無視した非現実的な議論である。

成長産業化論は一部の利益追求者の論理である

農業の成長産業化を掲げる議論の背後には、自らの利益を拡大したい一部の業界関係者の思惑がある。

非効率な農家を支えるJAへの批判は的外れである

JAが非効率な農家を支えているから組織維持や政治的利益を追求しているという批判は、現在の農村票の影響力低下や農業従事者の減少を考慮すると、もはや的外れである。

農協と政治の結びつきは過去ほど強くない

かつては農協と自民党農林族、農林水産省の「農政トライアングル」が強い影響力を持っていたが、選挙制度改革や農業人口の減少により、その力は大きく低下している。

農政トライアングルの影響力は過去のものになった

農政トライアングルと呼ばれた農協・農林族議員・農林水産省の結びつきは、2000年代後半の食料危機時には機能していたが、現在はほとんど影響力を持たなくなった。

TPP交渉を契機に農協組織の権限は大きく縮小された

TPP交渉をきっかけに、全国農業協同組合中央会(全中)が持っていた指導・監督権限は大きく剥奪され、農協組織は一般社団法人の連合体へと移行し、政策への影響力が著しく低下した。

現在の農協は農家の声を政策に反映する力が弱まっている

農協組織はかつてほど政策決定に影響を及ぼす力を持たなくなり、農家の声を国政に反映する役割も大きく削がれている。

農林水産省の権限は財務省や経済産業省とのパワーバランスの変化で大きく低下した

かつて農林水産省は財務省や経済産業省と対等なパワーバランスを持っていたが、現在は財政制約や他省庁の権限強化により、その影響力が大きく低下している。

鉄のトライアングルによる農業支配構造はすでに崩壊している

農協・農林族議員・農林水産省による「鉄のトライアングル」が農業政策を支配してきたという見方は過去のものであり、現在はそのような支配構造は存在しない。

改革推進派が農業改革を阻害しているという批判は誤りである

農業改革を阻害しているとされる側が実際には長年改革を受け続けてきたのであり、現状の弱体化は改革推進派の影響によるものである。

世界的な食料供給不安の中で国内生産の重要性がかつてなく高まっている

ロシア・ウクライナ戦争以降、世界的な食料サプライチェーンが混乱する中、国内での食料生産の重要性が戦後以来初めて極めて高まっている。

政策は一部の利益追求者に偏り食料安全保障の議論が不足している

現在の農業政策は一部の利益追求者の論理が強調され、国民の食料安全保障や地域社会の維持に関する議論が著しく不足している。

食料自給率の軽視と農業予算削減が農村の疲弊を招いている

食料自給率を重要視しない政策や農業予算削減の流れが、農村の疲弊と農業従事者の減少を招いている。

農協解体論の背後には外資や大企業の利権がある

農協の株式会社化や解体を進める議論の背後には、外資や巨大企業が農協の金融資産や共同販売機能を狙う意図がある。

農協の共同販売・共同購入機能の破壊は農家の交渉力低下と買い叩きにつながる

農協の共同販売や共同購入機能を破壊することは、農家の交渉力低下と農産物の買い叩きを招くため、慎重な対応が必要である。

農業改革は地域社会と国民の富を守る視点で進めるべきである

農業改革は、農協や地域社会を不当に攻撃し解体するのではなく、国民の富と地域社会を守る観点から進めるべきである。

安易な成長産業化論ではなく農家と地域社会を支える政策が必要である

成長産業化の名のもとに非効率な農家を排除するのではなく、農家全体と地域社会を支え、国民への安定した食料供給を両立させる政策が必要である。

農家への直接支払いによる所得補償が消費者利益にもつながる

農家への直接支払いによる所得補償を導入すれば、農家の増産意欲を高めつつ、消費者も安価に食料を入手できるため、双方の利益に資する。

消費者と生産者の双方を支える直接支払い制度の導入が食料安全保障の確立につながる

消費者と生産者の双方を支える直接支払い制度を導入することで、日本の食料安全保障を確立すべきである。

一部の利益追求や輸出偏重の政策は日本農業の破滅につながる

一部の利益追求や輸出偏重の政策に依存すれば、日本農業は破滅の道をたどることになると警告する。

現実を踏まえた協力と持続可能な農業政策が不可欠である

気上の空論や一部の利益に偏った政策ではなく、現実を踏まえた協力と持続可能な農業政策が不可欠である。