全体の要約
- 消費税は一般的に[消費者が負担し、社会保障の財源となる間接税]と理解されているが、実際には事業者が納税義務者であり、価格転嫁の仕組みや市場構造によって消費者が必ずしも負担しているとは限らない。
- 消費税法上も社会保障目的税とは明確に規定されておらず、税収の多くが国債償還費など本来の目的外に使われている実態がある。
- 国家財政は税収を前提とせず通貨発行で成り立っており、税の本来の役割は景気調整や格差是正である。
- 消費税増税論は経済や財政の理解不足に基づくものであり、消費税は本来不要か、景気に応じて弾力的に運用すべきである。
- したがって、消費税は減税または廃止が妥当であり、現行の財源論に基づく増税は正当性を持たない。
9割の日本人が誤解している消費税の実態|室伏謙一
消費税の一般的な理解は誤りである
消費税について多くの人は、商品購入時に10%や8%が加算され、消費者が負担している間接税であり、その税収が社会保障に使われていると理解している。 しかし、この一般的な認識はすべて誤りである。
消費税の納税義務者は事業者である
消費税の納税義務者は消費者ではなく事業者である。 消費税法第5条には、国内で課税資産の譲渡等を行った事業者が納税義務者であると明記されている。 事業者は商品やサービスの価格設定を自由に決めることができ、100円の商品を100円で売るか110円で売るかは事業者の判断に委ねられている。
消費税の負担は消費者が必ずしも担うものではない
消費税は商品の価格の一部を形成するものであり、消費者が必ずしも税として負担しているわけではない。 価格転嫁ができない場合、事業者が消費税分を自ら負担することもある。 大規模事業者と小規模事業者の取引においては、価格決定力の差により小規模事業者が消費税分を吸収せざるを得ない場合もある。
消費税は間接税ではなく事業者への直接税である
消費税は消費者に課税処分がないため、間接税ではなく事業者を対象とした直接税である。 事業者は法人税や事業税も納めているにもかかわらず、さらに消費税を納める必要があるため、消費税は第二の法人税とも言える。 法人税の二重取りのようなものであり、このような税金は不要であると考えるのが自然である。
消費税が社会保障の財源になるとは限らない
消費税が必要とされる理由として、社会保障の財源確保が挙げられている。 消費税法には、収入の使途として年金・医療・介護などの社会保障給付や少子化対策の経費に充てると記載されているが、法文上は[当てるものとする]となっており、必ずしも社会保障に使わなければならないとは書かれていない。 消費税法第1条には目的や趣旨が非常に曖昧に記載されており、社会保障給付に充てるとは明記されているものの、[当てるものとする]と表現されているため、他の用途に使うことも可能である。 したがって、消費税が必ず社会保障の財源になるとは限らないことが法文上からも明らかである。
消費税が社会保障目的税なら特別会計が必要である
もし消費税が社会保障給付のための特定目的税であるならば、特別会計を設けて消費税収入をそこに集め、社会保障に使うべきである。 しかし実際には特別会計は存在せず、消費税収入は一般会計に組み込まれている。 財務省は特定財源と主張しているが、実態は一般財源であり、これは詐欺的な税金の運用である。
消費税収の大半は国債償還費に使われている
安倍晋三元首相が国会で、消費税収の5分の4が国債償還費に充てられていると明かした。 国債償還費を予算に計上する国は日本だけであり、他国では借換債を発行して対応している。 消費税が社会保障目的とされながら実際は意味不明な用途に使われている現状は、財務官僚による背任や横領に等しい行為である。
国家財政は税収を前提とせず通貨発行によって成り立つ
国の財政は税収を前提にしてお金を使っているわけではなく、国債や国庫短期証券の発行によって通貨が供給されている。 国は信用創造によって無制限に通貨を発行でき、制限があるとすれば供給能力のみである。 したがって、税収がなければ歳出ができないという考え方は誤りである。
税の本来の役割は景気調整や格差是正である
税は無用というわけではなく、景気が過熱した際の需要抑制や、国民間の貧富の格差是正といったビルトインスタビライザーの役割を持つ。 法人税や所得税がその代表であり、税は社会の安定化に不可欠である。 ただし、税収を前提に財政運営をしているわけではない。
消費税増税論は経済や財政の理解不足による誤りである
新たな税や消費税率の引き上げを必要とする議論は、マクロ経済や税の役割、財政の仕組みを理解していない誤った主張である。 消費税が不要だと考えるのは当然であり、現状の消費税は即座に廃止、あるいは最低でも5%程度に減税すべきである。
消費税の本来のあり方は間接税かつ弾力的な運用である
消費税を景気安定のために残すのであれば、間接税として税率を0%にし、景気に応じて最大でも5%程度に調整できる仕組みにすればよい。 本来は所得税や法人税、かつて存在した物品税〔贅沢税〕で十分であり、消費税は不要である。
国の財政運営は経済状況に応じて柔軟に対応すべきである
国の財政は、その時々のマクロ経済状況に応じて赤字を拡大したり、増税によって黒字化したりするなど柔軟に運営すべきである。 戦争や供給途絶のリスクがある場合は、農業やインフラ、国防などへの投資を積極的に行い、必要に応じて国民に一定の負担を求めることも正当である。
消費税増税は財源論としても正当性がなく減税・廃止が妥当である
消費税を財源として社会保障や国債償還に充てるという論理は成立せず、税収を前提にした歳出も誤りである。 消費税は即時廃止、もしくは最低でも5%程度への減税を実施すべきであり、これが最も効果的な経済対策である。 消費税減税および将来的な廃止を求める声を上げていくことが重要である。