🟩 もくじ

中国経済のデフレスパイラルが世界経済にデフレ不況をもたらす仕組みについて

  • 中国経済で現実に起こっている主な流れ

内需不足と供給過剰:

  • 中国は不動産バブル処理の遅れなどにより内需が深刻に低迷しています。
  • 一方で雇用維持や生産拠点稼働の優先から、企業は工場の稼働率を高めに維持し続けています。

価格競争の激化と利益圧迫:

  • 需要不足にもかかわらず生産は止まらず、激しい価格競争〔いわゆる価格破壊〕が発生。
  • 工業製品・製造業品は市場で低価格でしか売れず、企業収益が大幅に悪化しています。

雇用と賃金の悪化、購買力の低下:

  • 企業業績悪化から雇用や賃金が下落。
  • これにより家計の購買力が低下し、内需をさらに冷やします。

在庫の積み上がりと輸出依存へ:

  • 捌ききれない低価格の余剰在庫が積み上がり、これを輸出に回す動きが強まっています。
  • 世界経済へのデフレ伝搬のメカニズム
現象 結果・波及経路
中国からの割安製品の輸出増加 世界市場での価格下落圧力
先進国・新興国の生産者 中国製に対抗、値下げ・競争激化
競合企業の収益悪化・倒産増加 雇用悪化・消費意欲低下・GDP低迷
世界全体のデフレ傾向強化 デフレスパイラルの波及と悪循環

中国から輸出される低価格製品が、世界全体の物価水準を押し下げます〔いわゆる[デフレの輸出]〕。

各国の企業は中国製品との価格競争に巻き込まれ、自国産業の倒産や失業増加を招きやすくなります。

  • これが内需低迷と物価下落に波及し、デフレ傾向が他国へも連鎖します。

特に欧米などの大市場では輸入製品のシェアが高く、自国の消費財価格の下落や国内産業への打撃が顕著になります。

この負の連鎖〔デフレスパイラル〕は消費や投資の更なる手控えを招き、世界経済の低迷や不況の長期化を引き起こします。

  • トランプ政権の高関税政策の役割

米国などでは、こうした中国発のデフレ的低価格輸出に対して関税引き上げなどの保護主義政策で国内市場を防衛する動きが出ています。

これにより一部の輸出余剰は第三国〔新興国など〕にシフトする形となり、世界全体の価格下落圧力が分散される場合がありますが、その副作用として貿易摩擦や一層の経済分断も生じつつあります。

  • 補足・留意点

[工場は生産すれば政府からお金をもらえる]との記述は、政府による補助金や政策的受注、優遇融資などの形で一部正しい側面があるが、恒常的ではなく企業業績悪化や民間部門の資金繰りには大きな苦しさが表れています。

デフレスパイラルの根本的な要因は内需の弱さと過剰生産能力の組み合わせにあり、このモデルは1990年代以降の日本経済の不況構造とも類似点が多いと指摘されています。

  • まとめると、中国経済のデフレスパイラルが世界経済に与える最大のリスクは[構造的な供給過剰による低価格輸出]の波及です。
  • これが国際価格の下落、各国産業の利益圧迫、雇用悪化を招き、最終的に世界的なデフレと長期不況を引き起こす仕組みとなっています。

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中国で発生した危機が世界に波及する可能性がある

中国国内で重大な経済的異変が発生している。 平静に見えていた中国経済の表面下で、起きてはならない兆候が顕在化している。 これは単に中国国内だけの問題にとどまらず、全世界に波及していく性質をもつ。 かつて新型コロナウイルスのパンデミックは中国・武漢から始まり、アジア、ヨーロッパ、北米・南米にわたって急速に広がり、瞬時にして全世界へと拡散していった。 仮に発生源が人口数万人規模の小国であったならば、ここまで大規模な災害には至らなかった可能性も一定程度ある。 しかし、中国は14億人以上の人口と広大な国土、さらには世界有数の経済規模を抱えており、その国際的影響力は計り知れない。

中国政府の大規模な景気刺激策とヘリコプターマネーの投入

新型コロナウイルス発生当時、中国政府は前例のない規模の景気刺激策を実行した。 その総額は数兆元と見積もられる。 政府は大量の国債発行とそれに基づく財政支出により、[ヘリコプターマネー]と呼ばれる形で資金を市場に直接投入した。 これは財政による家計や企業への支援政策であり、実質的に無制限かつ無条件での流動性供給を意味するものである。 このほかにも中国人民銀行は積極的な利下げ措置を実行し、金融緩和政策を重ねた。 同時に人民元の為替レートを安定させるため通貨価値の底上げと資本規制の強化にも着手した。 しかし、これらの一連の政策はいずれも想定された効果を上げることができなかった。

住宅市場のテコ入れと金融支援の限界

中国政府は経済の中核部門となる不動産市場にも介入した。 中国の住宅市場はGDP全体に占める割合が極めて大きく、いわば“経済全体を牽引する主力エンジン”の一つである。 このため、中国当局は国有・民間銀行に対して大量の信用供与、すなわち不動産セクターへの融資枠拡大と不良債権の棚上げを指示した。 こうすることで不動産ディベロッパーが支払い不能に陥るのを防ぎ、建設・販売活動の持続を担保しようと試みた。 だが、このテコ入れも抜本的な需要回復には繋がらなかった。

関税戦争の勃発とヘリコプターマネー供給の増強

加えて2020年代以降、米国のトランプ政権による貿易政策が中国経済に追い打ちをかけた。 トランプ大統領はメキシコおよび欧州諸国に対して30%の関税を課し、さらにBRICS主要国であるブラジルに対しては50%もの高率関税を課すという経済攻撃を仕掛けた。 こうした情勢の中、中国政府は[内需拡大]に焦点を当て、景気を支えるためヘリコプターマネーの投入額を一気に増強していった。 補助金、消費券、新エネルギー車購入補助、地方債の発行枠拡大など、あらゆる手段が例外なく導入された。 中国共産党の指導層は“最終手段”とも言える領域に踏み込んでいる段階にあり、もはや手段を選ばず国内消費を維持しようとする姿勢が顕著となっている。

財政政策と金融政策の両輪がいずれも機能不全に陥っている

しかし、こうした数年間にわたる一連の景気刺激策のいずれも、実体経済に対して有効な需要創出効果を示すことはなかった。 これは明確な事実である。 大量の政策資金が経済へと注入されたにもかかわらず、産業の再起動や内需の復活には繋がらなかった。 利下げも大規模補助金も、人民元高による購買力支援策も、不動産への有利供給も、それぞれ単独ではもちろん、組み合わせても実効性を持たなかった。 政策不発が何年にもわたって続き、2025年の現時点でもほとんど状況は改善していない。 この現実に対し、世界各国の政府・企業・メディアはいまだに的確な対処法を見出せておらず、中国経済の現在地が世界経済システム全体を揺るがす“臨界点”直前に位置している事実が懸念されている。

景気刺激策にもかかわらず中国のデフレが止まらない

中国では生産者物価指数〔PPI〕の低下が33か月連続で続いており、2025年の最新データでは対前年同月比で3.6%の下落を記録している。 この下落幅は2023年7月以来最大のものであり、あらゆるエコノミストの予測を超える水準となっている。 中国国家統計局はこの数字を認めており、PPIは景気刺激策を重ねてきたにもかかわらず全く回復しない状況にある。 政府はいくつもの構造的・即効的な施策を講じたが、需要が喚起されず、生産価格は持続的に低下しており、需要の消滅という現象が一層加速している。

中国経済の世界経済に対する影響は極めて重大である

中国は世界第2位の経済規模を有し、最大の輸出国家でもある。 中国における経済動向は、世界中、特に先進国の経済に極めて高い連動性を持っている。 現在、世界で流通する商品はその大半が中国製〔Made in China〕で占められており、製造段階での物価である生産者物価が中国国内で下がるということは、そのデフレが完成品を通じて世界各国に“輸出”されることを意味する。 すなわち、既に中国で33か月も続いているPPIの低下は、今後世界市場全体において物価下落圧力を増幅させ、国際的なデフレスパイラルを生み出す主因となる。

消費者物価指数〔CPI〕の小幅反発は一時的な補助金効果に過ぎない

直近のデータにおいて、中国の消費者物価指数〔CPI〕は予期に反し0.1%上昇に転じたものの、これは4か月連続下落後の一時的反発であり内容面に問題が残っている。 政府による家電買い替えや新車購入に対する補助金政策の影響が短期的に表れたものであり、いわゆる[ヘリコプターマネー]による一過性の効果にとどまっている。 センチメント、すなわち消費者心理が根本的に回復したことを示す材料は存在しない。 依然として消費者は将来不安や収入の停滞、雇用不確実性から消費に慎重である。 それゆえ、補助金政策の継続がなければ再びCPIは下落傾向に戻る構造となっている。

政策的なヘリコプターマネーの本質的な限界が明らかになっている

中国政府はこれまでに多くの財源を使い、景気刺激策のため消費券の配布、補助金の拡充、家電・自動車買い替え支援など実質的な現金給付とも言える政策を繰り返してきた。 これらは典型的な[ヘリコプターマネー]であり、無条件に市場に現金を撒いて需要喚起を図る施策である。 だが、このような政策が何年間にもわたって実施され続けたにもかかわらず、それらは再現可能な成長ではなく、短期的な波程度の変化しかもたらしていない。 継続的・実質的な需要拡大には繋がらず、経済活動全体において根強い低迷が続いている。 消費者センチメントが回復しない限り、いかなる給付も土台を強化することはできない。

消費低迷と雇用不安の連鎖が経済基盤を破壊している

現在、中国国内では既に明瞭な形でデフレ傾向が加速している。 このデフレは単なる価格下落ではなく、生産縮小、雇用不安、消費者心理の悪化、需要消滅という総体的な経済の収縮現象である。 これまで中国経済は借金を原動力とする[借金誘導型金融モデル]によって拡大を続けてきたが、需要に支えられないバブルの崩壊によって今まさに限界点を迎えている。 PPIが止まらずに下落していることは、すでにバブルが実質的に崩壊状態にあることを示しており、そこに補助金や緩和策を積み重ねても結果は変わらず、むしろ政策的限界が露呈している。

デフレスパイラルの構造が中国経済を蝕んでいる

中国では、需要が減少して企業の売上が伸び悩む中、企業間で必要以上の価格引き下げ競争が激化している。 これにより製品価格はさらに低下し、デフレが加速している。 デフレが進行することで企業の売上は縮小し、結果として社員への利益還元、具体的には給料という形での支出も減る。 その結果、国民の可処分所得が低下し、消費マインドが一層悪化する。 消費支出の減少は需要の縮小をもたらし、企業はさらに値下げを強いられ、全体のモノの価格が下がり続ける。 その連鎖が繰り返されることにより、経済は典型的なデフレスパイラルに突入しており、支出の抑制が一段と強まっている。 これは中国特有の問題ではなく、グローバルな供給チェーンを通じて輸出され、世界各国で同様の連鎖構造を引き起こす。

デフレの波が世界経済に及ぼす具体的な影響

中国での価格低下は[メイド・イン・チャイナ]製品を通じて世界中に拡散し、価格競争がグローバルに波及することで、他国でもデフレが蔓延していく。 最終的には企業の収益悪化、雇用の削減、給与水準の低下を通じて、消費のさらなる減退へと繋がっていく。 この流れは徐々に労働市場を蝕み、雇用不安が拡大することで、さらに消費者の購買行動は抑制される。 特に影響を受けるのは中国から最大の輸入を行っている米国である。 米国市場に流入する中国製品の価格が下落すれば、米国内においても、小売・製造業など幅広い業種で価格競争が激化し、結果的に企業収益が圧迫される。

リセッション指標としての失業者数と価格動向

米国では、失業保険継続受給者数が上昇しており、失業率の増加が始まるタイミングでCPI〔消費者物価指数〕も下げ止まりを見せている。 歴史的に見て、失業者数が増加し始めた段階で、すでにリセッションへの移行が確実となりやすい。 過去においても、インフレの急上昇によって家計が圧迫され、消費が減退し、企業売上が落ち込み失業が拡大するという流れが何度も確認されてきた。 現在のように関税強化や物価高騰が発生している局面では、企業活動は縮小し、赤色で示される失業者数の上昇が指標として確度を増す。 加えて、上昇に転じた失業率が一度動き始めると、それはほとんどの事例でリセッションに直結している。

センチメントの低下と政策無効化がさらに不安を加速させている

現在、消費者センチメントが急落している主因の一部には、関税政策や物価高騰がある。 米国における最新のチャートによれば、青ラインで示された消費者センチメントは急速に低下しており、それに続く形で赤ラインのPPI〔生産者物価指数〕も数か月遅れて下落する兆しを見せている。 これは過去のパターンと一致しており、2020年コロナショックや2022年の局面でも、まずセンチメントが下落し、次にPPIが落ち始めた。 2025年には、センチメントはすでに急落しているが、PPIはまだ高水準である。 このラグが生じているということは、これから世界経済にPPIの低下と生産縮小、失業の増加が波及していく局面に突入していることを示している。

過剰生産が価格下落とデフレをさらに悪化させている

中国経済では過剰生産が深刻な要因となっており、需要が縮小している中でも多くの産業分野で供給過剰の状態が継続している。 消費需要が拡大しないにもかかわらず、生産設備は高水準を維持しており、これが価格下落圧力として強く作用している。 つまり、企業は商品の販売を確保するために価格競争を激化させざるを得なくなり、この[価格引き下げの連鎖]がデフレ圧力を倍加させている。 中国政府は一部の業界に対し生産削減を指示しているが、地方政府は雇用維持の観点からそれに反発し、結果として削減は進んでいない。 このように、雇用維持と過剰供給という矛盾する二つの政策的判断が現場で衝突しており、構造的なデフレ圧力が弱まる気配はない。 この状態が続けば、今後も数年単位でデフレ状況が継続する恐れがある。

景気刺激策の限界が人民元に対する下落圧力を強めている

中国政府はこれまでにも何度も大規模な景気刺激策を実施してきたが、そのいずれも経済を押し上げる効果を示していない。 この累積的な施策の結果として、人民元には強い下落圧力がかかっている。 大量の資金供給は通貨価値の低下に直結し、特に外貨との相場バランスを維持するために人民元買いの為替介入が必要な水準に達している。 もし中国政府がさらに大規模な刺激策を打ち出せば、それは金利低下と供給増を通じて通貨下落の加速を引き起こし、最終的には人民元の実質的暴落に繋がる恐れがある。 インフレによる購買力の低下、資本逃避、海外投資家の信頼喪失など複数の副次的リスクの種が同時に顕在化する可能性がある。

米ドルが下落すれば世界経済への影響は極めて甚大である

現在、米ドルもすでに下落局面に入りつつあり、この状況はグローバル経済に対するもう一つの警戒信号である。 米ドルは世界で最も取引・流通されている基軸通貨であり、その価値の低下はあらゆる国の貿易や投資、中央銀行の金融政策に波及する。 仮に中国型の景気刺激策、つまり金利引下げと大規模マネー供給が米国で本格化すれば、米ドルの信認にも重大な影響が出る。 その結果、インフレと失業が同時進行するスタグフレーション的状況となり、各国の金融市場、労働市場、消費市場に同時多発的な混乱をもたらす可能性がある。

中小企業による価格競争が企業間の[共食い]を生んでいる

中国国内では、特に中小企業を中心に熾烈な価格競争が展開されており、各社が互いにシェアを奪い合ういわゆる[共食い]状態となっている。 この構造では、製品価格の持続的下落により、業績圧縮→雇用削減→消費減退→更なる値下げ、という負のスパイラルが生まれている。 この価格競争と収益悪化の連鎖はやがて国内にとどまらず、輸出市場においても同様の構図を助長する。 中国で発生した価格引き下げ圧力は米国やカナダなど、主要な貿易相手国に輸出品の価格競争を波及させ、世界中の企業間競争の激化につながっている。

カナダでも中国発の不況が現実化し労働市場を直撃している

トランプ政権による追加関税、ならびに世界経済全体の需要後退の影響で、カナダも経済的に深刻な影響を受けている。 2025年現在、カナダの労働市場では[自分の仕事は安定している]と自覚する労働者の割合が60%を下回り、不安が蔓延している。 およそ30%の国民が[将来の雇用状況が分からない]と回答しており、これは2023年以降で最悪の数値である。 中国の消費者が支出を控える最大の理由は、自らの雇用に対する不安であり、この懸念はカナダにも波及している。 製造業など貿易に依存するセクターでは、企業が在庫過多に直面し、それを要因として生産縮小と人員削減が発生している。 これにより、失業や雇用不安が広がり、消費も停滞している。

金利の引き下げは失業率の上昇につながる傾向がある

カナダ銀行はすでに政策金利を5.00%から2.75%まで引き下げているが、2025年5月時点での失業率は7.0%に達している。 この水準は新型コロナショックを除けば2016年以来の最悪値であり、政策金利の引き下げにもかかわらず雇用の安定には全く寄与していないことが示されている。 米国でも同様に、トランプ大統領がFRB〔米連邦準備制度理事会〕のパウエル議長に対し利下げの実行を強く要求している。 しかし、これは効果的な政策とはなりえず、過去数十年においても利下げが行われた段階から失業率の顕著な上昇が始まっている。 たとえば、1990年代のS&L危機、2000年代のITバブル崩壊、そして2008年のリーマンショック、さらに2020年のコロナショックがそれに該当する。 いずれの局面でも政策金利低下と同時に、赤線で示される失業率が上昇し始めている。

利下げの政策は経済システムの危機的兆候である

利下げは、政府や中央銀行の行動において[市場が耐えられない]状態にあるときに採用されるものである。 つまり、金利が高止まりしてしまっている理由そのものが、銀行の融資姿勢や資金供給基準に歪みを生んでおり、金融システムに流動性が行き渡らない状況となっている。 この状況下では、銀行に出向いても簡単に資金が借りられず、ビジネスや家計運営に必要な資金調達が困難になる。 これはすなわち、借金による成長に依存した[借金誘導型経済システム]が機能停止に至る現象であり、この経済モデル全体が限界に達していることを意味している。 借金が供給されなければ、新規事業も創出されず、既存企業も運転資金不足により縮小を余儀なくされる。 その結果、雇用は削減され、失業は増加し、消費者支出は減退する。

リセッションは即時発生せず、数年をかけて本格化する

リセッションの兆候として失業率の上昇が始まっても、経済の全面崩壊は時間差をもって進行する。 多くの人が[利下げ直後にリセッションが発生する]と誤解しているが、過去のデータでは失業率の上昇は1~4年にわたって継続し、その間に金融市場、消費市場、雇用市場の各セクターが徐々に崩れていく構造となっている。 イールドカーブの逆転現象〔長期金利が短期金利を下回る状態〕が継続している現在、経済の表面上は持ちこたえているように見えても、深層部分で崩壊が進行している。 リセッションは瞬間的に発生するものではなく、多くの国民が忘れた頃に予測不能な形で爆発し、深刻な被害をもたらす。

中国はすでに沈降段階へ進行し、米国も同様の運命に直面している

米国では現在のところインフレ率は依然として高水準を維持しており、名目上の経済成長も維持されている。 しかし、中国ではすでに次の段階、すなわちデフレ不況の[沈降段階]に入っており、これは米国も将来的に必ず到達するフェーズである。 中国ではこれまで繰り返し施行されてきた大規模な景気刺激策がことごとく不発に終わってきた結果、金融政策の有効性そのものが問われている。 景気刺激策の多用により人民元は下落圧力に晒され、為替市場での信認も低下している。 このように、先行して経済的限界に達した中国の状況は、まさに米国に対する警鐘となっている。 今後米国が中国と同じ道筋をたどれば、労働市場の大幅な悪化、株式市場の暴落、消費の消失、企業倒産の連鎖といった“多重クラッシュ”状態が不可避となる。 この時点で、カナダの失業上昇とそれに関連する利下げ非効率、そして米国・中国が直面している[沈降経済]局面について記述を完了しました。 承知しました。

景気刺激策の乱発は通貨価値を下落させ金融市場を不安定にしている

中国はこれまで、景気刺激策を何度も繰り返し実行してきたが、それによって人民元の通貨価値には恒常的な下落圧力がかかっている。 中国人民銀行は、通貨防衛のために人民元買い介入を余儀なくされ、海外資本の流出や、通貨の不安定化リスクと対峙する状況に陥っている。 仮に今後、中国がさらなる景気刺激策として、より広範かつ大量の[マネーばらまき]を宣言すれば、金利はさらに下落し、通貨の価値は暴落する局面に突入することになる。 そして、同様の政策がアメリカ合衆国においても実行された場合、その影響は計り知れないものとなる。 ドルはすでに弱含みの兆候を見せており、金利引き下げや大量の貨幣供給が行われれば、基軸通貨としてのドルの信認が揺らぎ、世界の金融システム全体に深刻な影響が及ぶ。 ドルが下落した場合、世界中の物価、貿易収支、投資ストリームが混乱し、世界経済はより不透明かつ不安定なフェーズに突入する。

デフレ圧力と価格競争の波及が中小企業の共倒れを招いている

中国ではすでに中小企業を中心に熾烈な価格競争が起きており、企業同士が互いの市場を食い合う[共食い状態]に突入している。 この値下げ合戦は利益率の限界を押し下げ、体力のない企業から順に市場から退場していく構図を生んでいる。 これによって失業率はじわじわと上昇し、国内雇用は疲弊し、消費センチメントのさらなる悪化につながっている。 こうした現象は、単なる一国の内需問題ではなく、中国製品の供給先である世界各国でも同様の[価格競争の輸出]が発生している。 特に家電、電子機器、衣料品など低価格帯市場においてすでにその傾向が見られ、先進諸国でも製造業がコスト・競争力で打撃を受け、市場全体が縮小傾向に入りつつある。

カナダでも同様の影響が表出し、雇用不安が拡大している

中国からの価格競争圧力や、トランプ政権による貿易関税などの複合要因により、カナダ経済でも各種統計指標に悪化の兆しが見られている。 世論調査によれば、自らの雇用が[安定している]または[やや安定している]と回答したカナダ国民の割合は、2025年に60%を下回った。 この数値は2023年以降で最低の水準であり、約30%の人々が[雇用の先行きが不透明である]と認識している。 カナダの失業率は4か月連続で上昇傾向にあり、2025年5月には7.0%を記録している。 特に製造業や輸出依存度の高いセクターでは、米国の関税政策の影響を直接的に受け、生産縮小と雇用調整が相次いでいる。 企業は、貿易戦争前に積み上げた発注在庫の山を前に、追加発注を控えて逆に生産ラインの縮小に踏み切っている。

製品需要の急減と在庫圧縮がPPIと売上高の下落をもたらしている

生産者物価指数〔PPI〕と小売売上高のデータが示すところでは、カナダおよび米国でも明確な需要収縮が進行している。 米国の統計チャートによれば、青線で示される小売売上高が大きく減少している局面では、必ず赤線のPPI、すなわち生産者物価も連動して下落している。 2011年、2016年、2025年のいずれの局面でも、この2指標は強い相関関係を保持しており、現在のPPIの下落傾向からは、今後の小売売上高のさらなる減少が示唆されている。 この動きが本格化すれば、企業収益は圧迫され、雇用維持は困難となり、さらに消費が低迷し続けるという悪循環が完成する。

世界は消費の限界に突入し、通貨政策ではもはや回避不可能である

過剰な負債とその返済困難、雇用の不安、インフレの懸念、通貨価値の不安定化によって、人々の消費意欲は限界まで削られている。 すでに中国では限界的支出水準に到達しており、いかなる景気刺激策を加えても消費を押上げることができない状況となっている。 この流れは欧米など他国にも波及し始めており、世界全体で消費の縮小が進行している。 各国の中央銀行が利下げやマネー供給を行ったとしても、雇用不安や賃金低下が消費を阻害し、経済を押し上げる力とはならない。 すなわち、利下げは万能薬ではなく、既に金利政策だけでは回避不能な規模の構造的経済収縮が始まっているのである。