マツダの混流生産が日本の製造業の競争優位性を支える

元マツダ副社長が断言!中国に対抗できる日本人最大の強み!日本企業が生き残る道◉加藤康子×岡崎五朗×池田直渡&藤原清志

ホンダが発表した事業計画とサプライヤーへの影響

ホンダは「Hondaビジネスアップデート2025」を公表した。この事業計画は2030年以降の電動化戦略に焦点を当てており、EVの生産目標を減らし、ハイブリッド車の生産を増やすという方針を打ち出している。ホンダのこの発表は、部品供給企業、特にティア3やティア4のサプライヤーにとって事業の存続に関わる重大な影響を及ぼしている。ホンダが2040年までにエンジン車を廃止すると発表したことは、サプライヤーに突然の事業転換を迫ることとなり、設備投資や増産の負担を増大させるため、多くのサプライヤーが事業撤退を検討せざるを得ない状況に陥っている。

ホンダの経営戦略に対する投資家の懸念

ホンダの事業計画は投資家からの懸念を引き起こしている。2024年の時点で、ホンダの全販売台数360万台のうち、EV販売台数はわずか5万台に留まっている。この少数のEV事業に多額の経営資源を投入するホンダの姿勢は、投資家から見て経営リスクが高いと評価されている。仮にEV販売台数が5年間で10倍に増加したとしても、それは年間50万台の生産規模にしかならず、ホンダを日本最小の自動車メーカーにする可能性がある。この事実はホンダの株価上昇に繋がらない要因となっており、投資家は同社の株を売却する動きを見せている。

自動車メーカーのEV戦略における整合性の問題

ホンダが示したEV戦略には、目標設定の整合性において問題がある。カリフォルニア州でのEV販売比率義務付け法が撤廃されたことを受け、ホンダはハイブリッド車を増産する方針へ転換した。これは市場の現実的な変化に適応する姿勢ではあるものの、一方で「2040年のエンジン廃止」目標は堅持している。この頑なな姿勢は、「2050年カーボンニュートラル」という、多くの現実的な人々が達成困難と見なす目標に固執するものであり、企業の柔軟性を欠くように見える。この戦略の矛盾は、ホンダ内部の異なる思惑や部門間の調整不足によって生じている可能性がある。

マツダが採用した多品種少量生産の戦略

マツダは「ブロックビルディング構造」と「モデルベースシステムエンジニアリング」を組み合わせた独自の生産戦略を採用した。この戦略は予測不能な市場環境に対応するために、生産体制を柔軟に保つことを目的としている。マツダは単一の車種が大量に売れる企業文化を持たないため、1つの生産ラインで複数の車種を生産する「混流生産」の技術を確立した。この混流生産により、年間20万台の生産能力を持つラインを単一車種で埋めることができない場合でも、複数車種の生産量を合計してラインを稼働させ続けることが可能になった。この生産方式は、ラインの休止による減価償却費の増大を防ぎ、企業の財政健全性を保つことに貢献する。

マツダのフレキシブルな生産体制が示す日本の製造業の強み

マツダが確立した多品種少量生産の生産技術は、日本の製造業が持つ強みを象徴している。中国のような単一製品を大量生産するビジネスモデルとは異なり、日本は多種多様な製品を高い品質で生産できる柔軟性を持っている。この柔軟性は、世界の自動車市場がEV、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、ガソリン車といった多様なパワートレインの需要に直面する中で、日本の自動車メーカーに競争優位性をもたらしている。このフレキシブルな生産体制は、グローバル市場、特に現地生産が求められる市場において、単一車種に依存しない多様な車種の生産を可能にし、現地雇用の安定にも貢献している。このアプローチは、今後の世界的な製造業のあり方における正しい方向性である。

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