火病〔ファッピョン〕/鬱火病〔ウルファッピョン〕

  • 火病(ファッピョン) l KBS WORLD Japanese
  • 火病〔ファッピョン〕は、主に韓国に特有の精神疾患とされ、[鬱火病〔ウルファッピョン〕]とも呼ばれる。
  • 怒りや強いストレスを抑制し続けることで生じる精神的障害であり、文化依存性症候群と考えられている。
  • 主な症状は、疲労、不眠、パニック、死への恐怖、不快感、食欲不振、消化不良、動悸、呼吸困難、全身の発熱、首やみぞおちにシコリ感など多岐にわたる。
  • 伝統的には40~50代の女性〔特に中年女性〕に多くみられたが、近年は男性や若年層にも患者が増加している。
  • 発症の背景には、封建的な家庭や社会で感情や怒りを抑圧される環境が指摘されている。
  • 東洋医学では[火病]は、抑うつした感情〔怒りだけでなく喜び・悲しみなども含む七情〕を発散できずに蓄積し、神経的な“火”となって現れる諸症状と定義されている。
  • アメリカ精神医学会でも韓国人に特有の病気として認識され、韓国語の“ファッピョン”のまま使われている。
  • 社会環境の変化とともに、家族問題や職場ストレスなど現代的な要因でも発症例が増加している。
  • 最近は[怒りを抑制できない][すぐカッとなる]といった症状で精神科を自ら受診する若者も増えており、症状や特徴は時代とともに変化している。

中国人にもファッピョン〔火病〕の人が多いように感じられる

ファッピョン〔火病〕は韓国特有の文化関連症候群とされますが、中国人にも類似の傾向が多いと感じる場合、共通する原因として以下の点が考えられます。

感情の抑圧文化

韓国では社会的・家庭的に怒りや不満を表に出さず、内に抑え込む文化的傾向が強く、これが火病の大きな誘因とされています。 中国も伝統的に個人の感情より集団や調和を重視し、感情〔特に怒り〕の抑圧傾向が強い社会とされてきました〔自知による補足〕。

社会的圧力とストレス

両国とも経済成長や都市化、学歴・競争社会による激しいストレスや家族内の役割期待が強く、特に女性・中高年層の精神的負担が重いという共通点があります。

家父長制とジェンダー役割

韓国では封建的な家庭内で女性が我慢を強いられて発症するケースが多く、中国も依然として家父長的価値観や伝統的ジェンダー観が根強く残っており、特に女性の精神的ストレスが蓄積しやすい環境があります。

疾患の認知や表現の違い

韓国では火病、そのままの名称で精神医学会も認定していますが、中国では[火病]として医学的認可はなく、多くは"抑うつ"や"神経症"など他の形で表現されます。 精神疾患の患者数自体は中国でも非常に多く、社会的なプレッシャーによる精神障害・突然の暴発的行動の例もしばしば報告されています。

現代的な要因

急速な社会変化・格差拡大・SNSによるストレスの共有・匿名性の高い批判文化など、近年の中国・韓国都市部では共通する現代的ストレス要因も加わっています〔補足〕。 まとめ

両国に共通する原因は、感情の抑圧文化、激しい社会ストレス、家庭やジェンダーに根ざした心理的負荷が大きいことです。

症状や現れ方は違っても、背景には[我慢文化]と[内在化するストレス]の環境要因が存在しています。