【中国・バブル崩壊】底なしの不動産バブル崩壊。今、中国で何が起きているのか?
■【中国・バブル崩壊】底なしの不動産バブル崩壊。今、中国で何が起きているのか?
2020年代は中国のGDP成長の節目である
2020年代は中国経済の成長の分岐点である。 2020年の新型コロナウイルス感染症流行前、世界のシンクタンクは2030年までに中国の名目GDPがアメリカを追い抜くと予測した。 しかし2025年に入るとその可能性は消失した。
中国経済は2010年頃に高度成長のピークを迎えた
中国経済は2010年頃に高度成長のピークを迎え、2013年以降の習近平政権発足後に減速した。 経済衰退の原因は多岐にわたる。
上海は中国三大都市の一つであり経済中心地である
上海は中国三大都市の一つで経済の中心地である。 上海にはM50モーガンシャンロードという美術館やギャラリーが点在する主要なアート地区が存在する。
天安千樹は大型商業施設で特徴的なツリーポット構造を持つ
天安千樹は2021年に完成した大型商業施設で、延床面積は約30万平方メートル〔東京ドーム6.5個分〕である。 施設全体が1000本以上の植物で覆われたツリーポット構造を持ち、自動散水装置を備えている。 設計は英国の建築家トーマス・ヘザーウィックが担当した。
天安千樹は開業後から集客困難と空きテナントの増加で苦戦する
天安千樹の内部は開業間もないにもかかわらず人が少なく、空きテナントが半数以上占める。 隣接地では2025年末完成予定の第2期エリア建設が進行しており、そこにはオフィスやホテルが入る。 初期集客は好調だったがリピーター確保が困難で、売上高は計画を下回り続けている。 高級ブランドの客引き失敗が主因であり、開業4年目にして廃墟モールと称されている。
中国国内では商業施設の廃墟化と不動産バブルの崩壊が進行する
中国の商業施設は廃墟化が進み、不動産開発プロジェクトのゴーストタウン化が拡大している。 中国の一人当たり名目GDPは約1万2000ドルで日本の半分以下にもかかわらず、不動産価格はニューヨークやロンドン、パリ、東京を上回る。 2021年に大手不動産デベロッパーの恒大集団がデフォルトし、2023年10月には碧桂園が米ドル建て債券支払いを遅延してデフォルトと認定された。 これら2社は日本の三井不動産や三菱地所に相当する規模である。 中国の14億人の人口と土地資源不足に基づく[不動産価格は下がらない]という神話は完全に崩壊した。
上海は歴史的な租界建築群と未来的な超高層ビルが共存する
上海の外灘〔ワイタン〕には19世紀から20世紀に建てられた西洋式建築群が並ぶ。 対岸の浦東新区には上海タワーや東方明珠塔などの超高層ビルが林立している。 外灘の西洋式建築群は1842年のアヘン戦争後の南京条約によって設置された欧米諸国の租界の歴史に由来する。 かつて外灘は[東洋のウォール街]と呼ばれ金融の中心地であった。
不動産バブル崩壊の主因は政策規制とコロナ禍である
中国の不動産バブル崩壊の要因は二つある。 一つは、習近平国家主席の[家は住むためのものであり投機対象ではない]とする発言に伴う人民銀行の住宅ローン規制強化、及び2020年に策定された[スリーレッドライン]と呼ばれる不動産企業向け財務規制である。 この規制はバブル抑制と過剰債務対策になったが、市場失速が中国経済に悪影響を及ぼした。 もう一つはゼロコロナ政策によるコロナ禍で、中小零細企業約400万社の倒産や失業率上昇によって一般家計の消費が急減し、不動産需要が落ち込んだこと、さらに富裕層や中所得層が海外移住志向となり不動産売却の供給過剰が発生した。
コロナ禍前の中国経済は不動産依存がGDPの30%に達していた
コロナ禍前の不動産関連産業のGDP比率は約30%であり、米国〔約20%〕や日本〔約10%〕を大きく上回る依存度であった。 改革開放政策以降、輸出主導型の大量生産モデルで外資を誘致し労働力を活用した結果、都市インフラ発展が遅れ、1990年代から内需拡大と不動産活性化が重点政策となった。
土地は国有であり定期借地権制度により民間利用が促進された
中国は土地を国有とし自由売買を禁じていたため、市場発展が阻害された。 1982年憲法改正で土地の公有性を明文化後、中国政府は日本の定期借地権制度を参考に定め、1998年に公営住宅制度を廃止し、用途別に50年または70年の定期借地権を設定して民間利用を促進した。 この制度が都市再開発と不動産開発ブームを促進した。
地方政府が土地使用権を売却し開発を積極推進した
地方政府は国有地の使用権を売却して財源を確保し、融資平台〔地方政府系投資会社〕を設立して開発を主導した。 金融機関もこれら融資平台に積極的に融資し、都市部では住宅需要拡大と多軒投資目的の不動産購入が急増した。 年収の20倍に及ぶ異常な住宅価格上昇が発生し、典型的なバブルとなった。
日本のバブル崩壊と異なり中国の不動産崩壊はより複雑で深刻である
日本は1990年代初頭のバブル崩壊後、経済低迷〔失われた30年〕に陥ったが社会不安は限定的であった。 中国は外資系企業の撤退やサプライチェーンの分断が進み技術水準低下や失業問題が懸念されている。 中国の不動産バブル崩壊は金融システムに加え地方財政にも影響を及ぼし、多くの地方政府系投資会社が債務超過状態となり財政悪化が顕著である。 地方財政悪化は中央政府の対応に大きく依存する。
不動産市場回復には構造改革と政府の積極支援が不可欠である
2024年10月以降、国家統計局のデータによれば70都市の新築住宅販売額は約1年5か月ぶりにプラスに転じたが、市場回復の判断は時期尚早である。 2024年11月時点で建設中及び販売停滞物件を含めた不動産住宅面積は約50億平方メートルに達し、日本の全住宅延床面積とほぼ同規模である。 この在庫を消化するために約4兆元の資金が必要であり短期間での解消は困難である。 住宅価格下落は不動産業界への不信感や市場メカニズムの錯誤によるもので、消費意欲は依然低迷している。 不動産市場の健全な回復には経済再生に加え、不動産業界の透明性向上と政府の積極的な支援が必須である。