石塚:そう。それで08年末の時点では、まずは「Aマウントのレンズの互換性がある、APS-C搭載のミラーレス」というところまでは決まっていた。だけど、資産が引き継げるのはいいけれど、それで他社と差異化できるくらい、小さくて軽くて魅力的なカメラになるかどうか、という問題があるわけですよ。
そうか。単なる小型化なら撮像素子が小さいマイクロフォーサーズのほうが有利だし、競争で勝てるのか、と。
石塚:「マイクロフォーサーズでやれば、確実に小さくなるよね」と。でもそれだと、完全に競合と同じ土俵になっちゃう。そしてご指摘の通り、せっかくコニカミノルタからαの資産を受け継いだのに、マイクロフォーサーズで違うものに乗り換えちゃったら、すべてがムダになっちゃいますよね。だったらまだ、自社開発のほうがいい。
ただ、Aマウントのレンズとは別に、ミラーレス専用の小型軽量レンズをつくったわけですよね。
石塚:はい、それが現在まで続いている「Eマウント」ですね。一眼レフ用のレンズは大きくて重いので、ミラーレス用には新しいEマウントという規格を用意して、専用の小型軽量レンズをつくることにしたんです。
「αのAマウントがあるのに、さらにEマウントを追加して、そっちもレンズを揃えるのか?」という、投資の重複を危惧する意見はなかったんでしょうか。
石塚:うーん、正直に言うと、当時考えていたミラーレス商品は、ポケットに入る小さいカメラとして、一般コンシューマー向けだと思っていたんですよ。なので、レンズも標準的なシリーズしか用意するつもりがなくて、フルラインナップまでつくる気はなかったんです。
えっ、そうだったんですか。じゃ、将来はEマウントがフルサイズのイメージセンサーに対応して、レンズもフルラインナップになるなんて。
石塚:ないない、このときは全然思っていません。