海沼みつしろ×宮台真司|グローバリズム時代の終焉とトランプ政権が目指す[古きよきアメリカ]の再生|日本再生における結〔ゆい〕の復活のアメリカ版
【宮台真司が"トランプ支持"を貫く理由】なぜ世界の貧困化は止まらないのか?資本主義、自由貿易が抱える闇を暴く【神回】|暫定サマリー
■【宮台真司が"トランプ支持"を貫く理由】なぜ世界の貧困化は止まらないのか?資本主義、自由貿易が抱える闇を暴く【神回】
- 統治コストが増大し続ける現代社会では、ルールや法律が複雑化し、強制力や課税が強まることで、社会の仕組みが単純な論理で動きやすくなる。その結果、利益を得るのは一部の権力者や大規模な組織であり、地方や社会の周縁部は貧困化しやすい構造が生まれている。
- 対談の冒頭では、飼沼が宮台真司の著作や発言に強く影響を受けてきた経緯が語られている。SNSでの交流をきっかけに、飼沼は宮台のイベントに大阪から新幹線で向かい、イベント終了後に直接会話し、今回のYouTube出演が実現した。
- 宮台は、若い世代とのつながりを求めているが、単に誰とでもではなく、共感や意義を感じられる相手が減っていると感じている。
- 宮台は2016年以降、トランプ支持を一貫して表明している。その理由は、アメリカ社会の歴史的な必然性や構造変化に根ざしており、単なる話題性や面白さではない。
- トランプの周囲には、マイケル・サンデルが論じるようなコミュニタリアン〔共同体主義者〕が集まり、さらにイーロン・マスクやピーター・ティールといったテクノリバタリアン〔技術系自由至上主義者〕も現状打破を目指している。
- アメリカで[リバタリアニズム]は本来、アナキズム〔無政府主義〕やコミュニタリアニズム〔共同体主義〕と重なる意味を持っていた。開拓時代のアメリカでは、法による強制ではなく、自由のもとで仲間や家族を守ることが社会秩序の基盤だった。
- アングロサクソンの家族形態の歴史的背景として、各家族的な独立性や自由が重視されてきた。子は両親から早期に独立し、相続に頼らず自分の資源を蓄える生き方が根付いていた。
- 南北戦争後、アメリカは工業化と都市化が進行し、地元とのつながりや自営業ベースのコミュニティが衰退した。都市で働き、郊外に住む生活が一般化し、地域社会への根付きが失われた。
- 南北戦争の本質は、北部の産業育成のための保護主義と、南部の奴隷制プランテーションによる国際貿易体制の対立だった。奴隷解放は南部の経済力を削ぐための手段として実行された。
- アメリカ社会は、法律や強制力による再分配で弱者を守るリベラリズムが主流となったが、これは本来のアメリカ的価値観〔良心や自発的な善行〕とは異なる。[良きことだから良きことをする]という自発的行動が、複雑化した現代社会では困難になり、統治権力による秩序維持が不可避となっている。
- サンデルは、リベラリズムによる権力的な再分配の秩序はアメリカの伝統ではなく、長続きしないと指摘する。トランピズムの台頭は、分権的な民衆統治への回帰を求める動きとして現れている。
- アメリカ建国初期には、ハミルトン主義〔集権的エリート統治〕とジェファーソン主義〔分権的民主統治〕の対立があり、移民の増加により分権的な民主主義が主流となった。
- 20世紀以降、民主党は集権的エリート統治を、共和党は分権的民主主義を支持する立場となった。日本の単純な左右対立ではアメリカ社会の本質を理解できない。
- トランプとその支持層は、アメリカ社会を分権的な民衆統治に戻すことを目指している。中絶問題〔アボーション〕も、各州ごとに判断を委ねるべきだという立場をとる。最高裁によるロー対ウェイド判決の見直しも、州ごとの判断を重視する流れの一環である。
- リベラルの言説が形式化し、実態を伴わなくなっていることへの反発がトランプ支持の背景にある。民主党が労働者層や低所得者層の実態に即した政策を打ち出せず、共和党が労働者層の支持を拡大している現状も背景にある。
- 宮台は、アメリカの歴史的経緯から見て、分権的な民衆統治こそが本来の姿であり、トランプ支持はその論理的帰結であると考えている。
- 統治コストの増大やルールの複雑化は、社会の分断や個人の孤立を生み出しやすく、従来の共同体的なつながりや自発的な善意に基づく秩序維持が困難になっている。
- 現代社会の課題は、巨大なシステムや集権的な統治から、個人や地域の自律性、分権的な統治への回帰をどう実現するかにある。
- 連邦最高裁が中絶〔アボーション〕を禁止する判決を覆したことで、アメリカは本来の姿に戻ったと捉えられる。これは善悪の問題ではなく、アメリカ社会が元の価値観に立ち返った現象と位置付けられる。
- アメリカ社会の歴史的文脈でトランプ現象を捉えると、東部の伝統的エリートが[正しいこと]を押し付ける体制から、建国時の原点に戻ろうとするルネサンス運動として理解できる。
- リベラル勢力は、理念を掲げつつも、実際には筋力や強制力で税金を徴収し、再分配を行うという構造に陥っている。これが現代のリベラルの特徴であり、サンデルも指摘するように、アメリカ本来のやり方ができなくなった結果として現れている。
- トランプの本質は、政策の成否ではなく、既存の壁や常識を破壊し、中央集権的な構造やグローバル化の流れに対して異議を唱える存在である。
- 国際自由貿易の理論は、リカードの比較優位説やパレート最適性に基づき、各国が得意な分野で生産し、自由に交換することで全体の幸福度が上がるとされている。
- この理論の前提には[戦争や経済制裁が存在しないこと][自由な取引が可能であること][各国に比較優位が存在すること]があるが、現実には戦争や制裁、競争の激化によって前提が崩れやすい。
- グローバル化の進展により、生産拠点の移転や移民労働力の流入が加速し、企業はコスト削減のために賃金を下げ、固定費を抑える圧力が強まる。
- 生産拠点の移転先でも、賃金競争が激化し、現地労働者の賃金が上がらず、地域全体の貧困化が進行する。移転元でも労働者の賃金が下がり、格差が拡大する。
- 世界銀行などは[世界の貧困はほぼ撲滅された]と発表するが、実際には移転先の地域で新たな貧困や格差の拡大が発生している。
- 格差の拡大に伴い、福祉予算の増加や無差別殺傷事件の多発など、社会不安や統治コストの増大が顕著になっている。
- 移民の流入は賃金の下落圧力となり、政治的対立や社会的分断を引き起こす。ヨーロッパでは移民問題がブレグジットや極右政党の台頭につながった。
- 統治コストが増大すると、政府予算が膨らみ、行政国家化が進行する。政府は財源確保のため国債を発行し、その多くをグローバル金融資本が購入する構造ができている。
- 統治コストの増大によって最終的に利益を得ているのは、グローバル金融資本や軍産複合体などの巨大組織である。
- 戦争や紛争が続くことで、軍需産業やグローバル金融が利益を拡大し、株価の上昇や設備投資の増加が促進される。
- SDGsや地球温暖化などの[良いこと]を掲げる運動も、グローバルな集金システムを維持するために利用される側面がある。
- 社会の根本的な問題や生きづらさの原因を考える際、最終的に誰が利益を得ているのかという視点が不可欠である。